ナベクラザゼンソウ

 

鍋倉坐禅草 サトイモ科 ザゼンソウ属

Symplocarpus nabekuraensis nom. nud.

環境省レッドリスト 絶滅危惧ll類

長野県レッドリスト 絶滅危惧IA類(CR)

写真1 ナベクラザゼンソウ (鍋倉座禅草) サトイモ科 ザゼンソウ属  2011.06.12 長野県
写真1 ナベクラザゼンソウ (鍋倉座禅草) サトイモ科 ザゼンソウ属  2011.06.12 長野県

 

 2002年に新種として報告された、とても新しい種です。 そして今回私たちが見ることができた2011年6月12日のたった2日前に、本種が「発熱植物」であることが、第37回長野県環境科学研究発表会にて発表されました。 寒冷地帯に分布する発熱植物としては、ザゼンソウに次いで2例目の大発見です。 雪が残る肌寒い湿地で、ホットな話題に包まれた花を観察しました。

 

 写真1を見て、「アレ?花がないじゃん」と思った方もいらっしゃるかも知れませんね。 でも花はちゃんと咲いているのですよ、ふっふっふっ...。 花を詳しく見る前に、もう一度上からこのデッカイ葉を見てみましょう。

 

写真2 ナベクラザゼンソウの葉
写真2 ナベクラザゼンソウの葉

 

 写真2の葉は、長さ25cmくらいです(正確に測ってこなかった(^^;))。 この後、まだまだ大きくなるようです。ネットで検索してみたところ詳しく調査した文献**が見つかり、葉長は最小で58.2cm、最大で95.1cm、平均72.9cm (n=10)であったと記されており、かなり大きな葉になると知りました。 さて、それでは花に寄っていきます。

 

写真3 ナベクラザゼンソウ
写真3 ナベクラザゼンソウ

 

葉の根元の左に咲いているのが、花です。葉に比べて小さいですね。

ヒメザゼンソウに匹敵するくらい小さいです。

 

写真4 ナベクラザゼンソウ
写真4

 

 ナベクラザゼンソウの花です。 外側の薄茶色のものは花弁ではなく、仏炎苞(ぶつえんほう)と呼ばれる、苞(包葉)です。 他の植物では目立たないことが多い苞ですが、サトイモ科の植物ではこのように大きく目立つことが多いようです。 花序を包みこむような構造は、花に寄ってくる昆虫を内部に閉じ込めることで、滞在時間を長くし、受粉の確率を高めていると考えられています。

 

 ザゼンソウ仏炎苞は20cm程度になりますが、ナベクラザゼンソウは3〜8cm程度で、小さいです。 ヒメザゼンソウは更に小さく、2cm程度です。

 

写真5 ナベクラザゼンソウ
写真5

 

 中央部の黒っぽい部分に、たくさんの小さな花が穂状の花序を形成しています。 このような穂状花序(すいじょうかじょ)の主軸が肉厚に膨らんだものを、肉穂花序(にくすいかじょ)といいます。 黒く亀甲状のものは花被の上部になります。 かすかにクリーム色がかった白いものは花粉です。

 

 ナベクラザゼンソウはこの肉穂花序の部分を発熱させているというのです。 ある調査によると、外気温が 15.6℃ のときに花序の平均表面温度は 21.6℃。 外気温との温度差 6.0℃ が測定され、発熱現象が確認されたそうです。

 

 この外部サイトに発熱の様子をサーモグラフィで確かめた写真があります。

興味があればご覧ください。(また戻って来てね)

 

msn産経ニュース 2011年6月8日  

自ら発熱するナベクラザゼンソウ 寒冷地では2例目の確認 長野県」

 ↑このリンク先はなくなってしまいました。

 

長野県環境部 プレスリリース 2011年6月3日

「絶滅危惧種ナベクラザゼンソウが発熱植物であることがわかりました」

 ↑このリンクは削除されてしまいました。

 代わりにこちら↓の資料を探しました。2013.01.21

長野県「エコ・へるす」ナベクラザゼンソウは発熱植物

 

写真6 後ろ姿
写真6 後ろ姿

 

 ナベちゃんの後ろ姿もかわいいでしょう? 思わずナデナデしたくなります。しかしその誘惑に打ち勝って、触りませんでした。 「モデルさんには、Don't touch!」です。 しかしちょっと後悔しています。 やはりちょっと触らせてもらって、感触を確かめるべきだった。 きっとスベスベした感じだったことでしょう。

 

写真6 ナベクラザゼンソウが自生する湿地
写真6 ナベクラザゼンソウが自生する湿地

 

 ナベクラザゼンソウ、ザゼンソウにヒメザゼンソウ。 花を大写しにした写真を見るとよく似ていますが、それぞれに特徴があります。 簡単ですが、下の表にまとめてみました。

 

  ナベクラザゼンソウ ザゼンソウ ヒメザゼンソウ
分布 本州(岩手県~福井県)の多雪地帯の水湿地

北海道、本州の半日陰の湿地や、樹林内の細流脇など

北海道~本州(中国地方)の里山・山地・亜高山の湿地・湿原

花期 6月 3〜5月 6月

開花と展葉

の順番

開花と展葉がほぼ同時  開花が先、展葉は後* 展葉が先、開花は後 
発熱の有無 有り 有り  無し

*ザゼンソウは寒冷地で遅くまで雪が残る場所では、花と葉をほぼ同時期に

展開することもあります。

 

 

 寒冷地に分布するナベクラザゼンソウとザゼンソウが発熱する理由ですが、昆虫の誘引のほか、開花期や受粉時の低温障害を回避したり、寒冷環境での肉穂花序の生育を促進させるためという理由なども考えられますが、詳細はよく分かっていないそうです。

 

 ナベクラザゼンソウが発熱することがつい最近わかったのだということが、私のような花の初心者には少し不思議に感じます。サーモグラフィはまだまだ高価ですが、それでもザゼンソウが発熱することは知られていて、いろいろ研究も行われている訳ですから、「ナベクラザゼンソウはどうかいな?」ともっと前に調べた人がいてもおかしくないのにね?と思ってしまいました。

 

 それはともかくとして、今回は大変珍しい植物を見ることができて、非常に有意義な花さんぽでした。情報を下さった皆さまに心より感謝致します。

 

**参考文献「ザゼンソウ及びナベクラザゼンソウの展葉と開花パターン」

 

 

ナベクラザゼンソウ

 

2002年に長野県環境保全研究所により新種として発表された。また発熱植物であることが2011年6月に発表された。

高さ20~50cmの多年草。葉は腎円形で、普通長さより幅のほうが広い。花は葉の展開と同時に咲き、仏炎苞は暗紫色で長さ3~8cm程度。花期は6月。


2011.06.20 掲載

 

コメント: 4 (ディスカッションは終了しました。)
  • #1

    かのん (火曜日, 21 6月 2011 06:57)

    参考文献見て、戻ってきましたよ~(笑)

    そうなんですか、ナベちゃんは、形はヒメちゃんに似ていますが、しくみはザゼンゾウに近いのですね。

    それなのに最近までヒメちゃんと混同されていたなんて!

    勉強になりました。

    それにしても、ひとつの種をこれだけ熱心に調べて下さった、ヒロケンさんには頭が下がりますが、大塚先生も凄い!

    寒い山中で何日も地道な観察を続けられたんですね~

    改めて先人も含め、植物学者さんの努力に敬意を払わずにはいられません。

  • #2

    中途半端 (火曜日, 21 6月 2011 07:06)

    活発に東奔西走ですね。
    自分には始めての山野草ばかりです。
    所で、新種を登録(発見者の名前をつければ?)するのに費用がかかると聞きました。
    ちょっと不自然に思いませんか?

  • #3

    hanasanpo (火曜日, 21 6月 2011 23:58)

    かのんさん
    ナベちゃんとザゼンくんとヒメちゃんの3兄弟(?)を全部見ることができて、ちょっと嬉しいです。
    正直言いまして、つい最近までザゼンくん以外は存在も知りませんでした。ナベちゃんとヒメちゃんは私の持っている図鑑にも載っていないし。

    図鑑の解説のさり気ない一言も、実はそれがわかるまでには、研究者の方々の血のにじむような努力があったのかも知れませんね〜。 でもでも...すごい労力と時間と費用をかけていたとしても... きっと楽しかったのではないかなあ?
    先日ナベちゃんが発熱することを発表された方も、きっとすごく嬉しく、誇りに思われたことでしょうね〜。

  • #4

    hanasanpo (水曜日, 22 6月 2011 00:04)

    中途半端さん、こんばんは。
    新種の登録に費用がかかるのですか。う〜ん、知らなかった。というより、考えてみたこともありませんでした。
    しかし、タダより高いものはない!ということで、無料にしてしまうとどこまで行っても千円の高速道路のように大混雑するかも知れません。
    スミマセン、今晩は久しぶりに外で飲んで来まして、モツ焼きをつまみにビール、焼酎と進みまして、ちょいと酔っております。おかしいことを申しておりましたら、ゴメンナサイです。

 

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ナベクラザゼンソウが掲載されたページ

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  2011年6月15日 新潟・信州花さんぽ(2)

 

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