シモツケコウホネ

 

下野河骨 スイレン科 コウホネ属

Nuphar submersa 絶滅危惧1A類 (Critically Endangered)

〜 世界に一つだけの花 〜

 シモツケコウホネ  2012.07.24 栃木県日光市
 シモツケコウホネ  2012.07.24 栃木県日光市

 

 初めて自生地を訪れました。 世界で初めて発見された、沈水性の

コウホネ属の植物です。 2003年に発見、2006年に新種として発表

されました。 世界中で栃木県内の4箇所だけに生育します(2012年

8月現在、日光市、那須烏山市、真岡市、さくら市)

 

 北海道から九州まで分布する同じ属のコウホネと異なり、葉は水中

に没した沈水葉だけで、抽水葉(水上の葉)を作らないことが最大の

特徴です。 花茎だけが水面からまっすぐ10〜15cmほど突き出し、

先端に花を一つ咲かせます。 現状の自生地は水路など流水の環境で

すが、池などの止水域に移してもこの性質は変わらないそうです。

 

シモツケコウホネ 

 

 このような小さな水路にいました。 水面に見える細い

緑の葉は他の植物のものです。 偏光レンズを持っていな

いので... 水面が反射して葉が見えにくいですね。

 

 シモツケコウホネの葉
 シモツケコウホネの葉

 

シモツケコウホネの葉です。細長く、薄い膜のような感触でした。

 

シモツケコウホネの花

 

 花弁に見える外側の黄色い部分は、萼片です。 中央部の型の

部分は柱頭盤(註1)で、美しい朱色をしているのが特徴です。

 

 柱頭盤の外側には放射状に多数の雄しべがあります。 スイレン

科の雄しべは花糸が扁平で、葯との境界線が不明瞭です。 先端に

2つづつ、朱色の縦線が見えますが、ここが裂開し中の花粉が出て

きます。

 

 花弁は見えにくいのですが... 萼片の根元付近に、先端に朱色の

部分が無い扁平な細長いものが覗いていますが、これが花弁です。

花の構造については、ナガレコウホネ(註2)のページでも説明し

ているので、よかったらご覧下さい。⇒こちらです。

 

シモツケコウホネの花

 

 こちらの花は葯が裂開し、白っぽい花粉が出てきています。 6月から

10月まで次々と咲くそうですが、1つの花の寿命は1週間ほどだそうです。

 

ナガレコウホネとカエル

 

 トノサマガエルですかね? 水路には他にニホンアマガエルや

ツチガエルもたくさんいました。 それだけ環境が良いのでしょ

う。 カエルを撮ったのですが、シモツケコウホネの葉の雰囲気

がわかるので、掲載します。

 

シモツケコウホネ

 

横からの立ち姿です。 ほとんどの株がすっく!

とまっすぐに花茎を立ち上げていました。

 

シモツケコウホネ

 

横顔をアップで。 なかなかかわいいではない

ですか? 雄しべは少し反り返るようです。

 

シモツケコウホネ

 

 それにしても... なんだか花の数が少ない感じ。 ネットで見た写真ではもっと咲いていたのに。 初めて訪れた場所なので、前年までの開花の状況がわからず、時期的なものかな?と思っていました。 しかし昨日、自生地地元の下野新聞のWEB版の記事(註3)を見つけ、驚きました。 今年は開花数が「激減」しているというのです。

 

 下のグラフは、その記事に基づき、最近5年間の7月の最少・最多の開花数を示したものです。 2010年はほ場の整備が進行中で激減し、2011年はほぼ同じ、そして回復が期待された今年は、2010年をも下回る開花数になってしまったとのことです。

 

 7月のデータを取っているということは、7月が最も花が多い季節だからでしょう。それなのに、今年は最少でたった4個しか開花しなかった日があったということです。これはかなりまずい感じですが、激減している原因はわかっていないそうです。

シモツケコウホネ 7月の1日当たりの開花個数

 

 「なんだか花が少ないな」と思ったのはやはり正しかったようで、この自生地で何か異常なことが起きているのかも知れません。

 

 2012年4月17日、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律施行令の 一部を改正する政令」(長い!)が閣議決定されました。 これにより植物ではウラジロヒカゲツツジ、カッコソウとともに、シモツケコウホネが新たに「国内希少野生動植物」として追加されました(註4)。 これにより「採集」や「譲渡」も禁止されることになります。

 

 指定するのはいいですが、それで終わらず、具体的なアクションを早急に起こしてもらいたいものです。 地元の「シモツケコウホネと里を守る会」でも「関係機関で専門的な調査と対策を講じてほしい」と要望しています。 上のグラフでわかるように、状況は危急です。 国が保全すべき植物と認めたのなら、早急に対策を講じてほしいものだと思います。 個人的には、外国産(中国)のトキの回復に莫大なお金を使うのはやめて、(シモツケコウホネに限らず)国産種の保全に税金を使ってほしいと思います。 トキの予算(註5)何百分の一でもこちらに回してくれたらなあ!

 

(註1)複数の柱頭が合着して盤状になっているもの

(註2)シモツケコウホネとコウホネが自然交配した雑種。⇒ナガレコウホネ

(註3)下野新聞 SOON(Shimotsuke Original Online News)の

    2012年8月11日版は、こちらです。  この記事は削除されました。

(註4)環境省の2012年4月17日の報道発表資料は、こちらです。

(註5)2012年、環境省はトキ関連予算に約1億5千万円を計上した。

    1999年以降の累計は32億8千万円(!)にのぼる。

    出典:中國新聞WEB版2012年4月25日 ⇒こちらです。 この記事は削除され

    ました。

 

外部サイト最終閲覧日:2013年4月30日。それぞれのサイトの都合で削除されることがあります。

 

シモツケコウホネの咲く水路の土手は、とても脆いのです。
人の体重で簡単に崩れてしまいます。水路の縁に近づかないで下さい。
水路内には絶対に立ち入らないで下さい。葉を痛めてしまいます。
水路内に三脚を立てることもご遠慮下さい。

 

 上の枠内のことをホームページに掲載することを地元の近隣に住む方と約束したので、掲載します。 貴重なシモツケコウホネを守るために、ご協力をよろしくお願いします。


 「多くの人に見に来てもらってもいい、団体が来て少しうるさくたって気にしない、だけど水路の土手を踏みつけて壊したり、撮影のために中に入ったりすることだけはやめてほしい」。 このようにもおっしゃっていました。 土手が崩れるとすぐに水路が狭まってしまうので修復するそうですが、とても労力がかかるそうです。

 

 花観察も、最低限のマナーは守らないといけませんね。 いろいろ考えさせられた花さんぽでした。

 

2012年8月18日 掲載

 

追加情報(外部サイト)

シモツケコウホネ見頃、開花数2倍に 日光・小代地区に自生

 (下野新聞 SOON(Shimotsuke Original Online News)の2016年6月28日版)

栃木県、小代自然環境保全地域を指定 2016/03/28

 (国立環境研究所)

 

コメント: 4 (ディスカッションは終了しました。)
  • #1

    あひる (火曜日, 21 8月 2012 03:20)

    お久しぶりです。 暑い日が続きますね。
    お元気で観察続けられていてなによりです。

    シモツケコウホネ。葉っぱが水に沈む、世界で唯一の品種がある! スゴイですね。
    知らずに出会ったら、コウホネに見えない。なんか咲いてるなぁって見過ごしそうです。

    小さくてかわいらしい花ですね。
    すっくっと、茎をまっすぐにのばし、空を見上げている。

    「上を向いて歩こう。涙がこぼれないように。」
    派手さはないけど、実直で正直。けなげで、希望を持って生きている。
    昔の日本人のようなお花ですね。どっちも絶滅危惧種?

    きれいなお水の清らかな流れの水路なんでしょうね。
    カエルちゃんとのコラボ、ナイス!、
    目線もお花を見ているようでいいですね。
    ふらりと、散策してみたくなりました。

    でも、きっと、注意を知らなかったら、
    土手の縁ギリギリ踏んで、水路覗きこみそうです。
    大切にしたい思いはあっても、知らずに反対の事をしてしまいそうです。
    注意は、とってもありがたいですね。

    国も、抽象的にわけわからんように書かずに、せめて具体的に示してくれたらいいな。
    やるきあんのかぁ(--〆) ないよなぁ(涙)

  • #2

    hanasanpo (火曜日, 21 8月 2012 21:51)

    お久しぶりです! 本当に厳しい残暑ですね。 あひるさんもお元気ですね?
    昨夜、「あひるさんはどうしているかね〜?」などと噂していたのですよ。
    噂をすれば影!(笑) お待ちしておりました。


    シモツケコウホネは、とても控えめで、かわいい花でした。
    なぜ浮葉を作らないのか、あるいは作れないのかはわかりませんが、きっと大昔からいたのでしょう。
    つい最近までコウホネとは別種と気付いてもらえなかった訳ですが、そんなことにはお構いなく、しっかり生き延びていたのでした。
    そう、昔の日本人のように、ちょっと不器用だけど実直で、正直に生きてきたのだと思います。
    自生地がもっと見つかるといいなあ!

    カエルちゃんは、別の写真にも写っているのですよ。 2枚並べた葉の写真の横長の方にいます。 じっとこちらの様子をうかがっています。

  • #3

    ムラカミ (土曜日, 30 5月 2015 13:15)

    兵庫県神河町大歳神社の池にも自生していました。5月28日にガイドさんに案内してもらいました。

  • #4

    hanasanpo (日曜日, 31 5月 2015 22:21)

    このページ内にも書いてある通り、シモツケコウホネは栃木県にしかいません。
    よって、別種と間違われていると思いますよ。
    もしかすると、オグラコウホネではありませんか?
    オグラコウホネは浮葉性の植物です(葉が水面に浮いている)。
    シモツケコウホネは枕水葉しか作らないことが最大の特徴なので、まったくの別種です。

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