シライトソウ

 

白糸草 シュロソウ科 シライトソウ属

Chionographis japonica

シライトソウ  2014.05.25(このページの写真すべて) 愛知県 alt=100m
シライトソウ  2014.05.25(このページの写真すべて) 愛知県 alt=100m

 

 今年(2014年)に初めて見ることができた花の一つです。

まるで白いブラシのようにも見える、不思議な花です。純白

の花は、林内でも目立ちました。

 

シライトソウ

 

 本州の秋田県以南〜九州の山地の林内や谷沿いに生える多

年草です(西日本に多い)。 花期は5〜6月。 花茎の高さ

は15〜50cmで、上部に長さ10〜20cmの穂状花序を出し、

白い花を多数つけます。

 

シライトソウの根出葉
シライトソウの根出葉

.

 根出葉はロゼット状に出ます。 形状は長楕円形〜

倒披針形で、長さは3〜14cm。 先端はやや鈍頭で

下部はだんだん細くなり、柄となります。 葉の縁は

先端部から、あるいはやや基部よりからこまかく波打

ち、それは葉柄まで続きます。

 

シライトソウの根出葉の葉柄の縁も波打っている
葉柄の縁も波打っている

 

 上は無理矢理トリミングした画像ですが、葉柄の縁が波打っている

様子がわかります。 このことは以前図鑑でアズマシライトソウを調

べたとき、あたかもアズマシライトソウの特徴であるかのように書か

れていたのですが、シライトソウにもそれがあるとわかりました。

 

シライトソウの茎葉
シライトソウの茎葉

 

茎には線形〜披針形の茎葉があります。

 

シライトソウの茎葉の基部も波打っていた
茎葉の基部も波打っていた

 

 このページを作っていて気が付きました。 茎葉の基部

にも、波打っている部分があったのです(白っぽい部分)。

 

 さて、花を見ていきましょう。

 

シライトソウ

 

 花に近づいて、やや上方から見るとこのように

見えます。 ビッシリと花をつけていますねえ!

更に詳しく見てみましょう。

 

シライトソウ

 

 花序を真横から見るとこのような感じです。 細い

花被片が真横に向いて突き出すようについています。

花序の部分の花茎は、花と同じ白色です。

 

もっと近づいて、花序を上から下へ見ていきましょう。

 

シライトソウの穂状花序の上部
花序の上部

 

 花序の上部です。 花は花序の下から咲いてい

くので、最上部の花が一番若いことになりますね。

 

シライトソウの穂状花序の中央部
花序の中央部

 

 花序の中央部です。 図鑑には「花は左右対称である」と

書いてありましたが、どれがどれやら、よくわかりません!

 

 一つの花には6個の花被片がつきます。 上方の4個と下

方の2個に別れ、上方の4個は長く7〜12mmあり、先端が

太めになる線形です。  下方の2個はごく短く、ほとんど目

立ちません。

 

シライトソウの穂状花序の下部
花序の下部

 

 花序の下部です。 花茎は緑色ですが、花序の

下でやや白っぽくなり、花序の中は完全に白色に

なっています。

 

 さて、ここで一つの花の各部の詳細を見ていき

たいところなのですが、花全体にピントが合った

適切な写真がなく、困りました。 これはもう、

「奥の手」を使うしかなさそうです。

 

 

 奥の手で、花の各部に輪郭線を引きました。 PCでご覧の方は、上の写真にマウスでポインターを重ねると線が現れます。 外すと消えます。 スマホでご覧の方は写真をタップして下さい。 写真以外の部分をタップすると消えます。

 

  • 6個の花被片のうち、上方の4個を赤い線で示します。 写真では奥から手前方向に突き出しています。 長い線形で、先のほうが太くなります。 長さは7〜12mm。 この花被片はよく目立ちますが、他の部分は小さく目立ちません。
  • 下方の2個の花被片はピンク色の線です。 これは本当に短く、この花では1mmあるかどうかでしょう。
  • 6個の雄しべを黄色の線で示しました。 花糸は白色で短く、やや樽型です。 葯は薄い肌色で、やや球形でした。
  • 花柱の先端は3つに分かれています。 青い線で示しました。 内側に柱頭がありますが、写真では判別できませんでした。

 

 シライトソウの特徴は以上です。 今回花さんぽとしては遠方まで足を運びましたが、フレッシュなシライトソウをたくさん見ることができ、大満足でした。

 

林縁に咲くシライトソウ
林縁に咲くシライトソウ
シライトソウ ツイン
ツイン

 

 ソロでたたずむシライトソウも素晴らしいのですが、

いくつか集まって咲いている姿も、またよいものです。

 

シライトソウ トリオ
トリオ
シライトソウ カルテット  花序が丸っこい
カルテット  花序が丸っこい
シライトソウ クインテット
クインテット
シライトソウ セクステット
セクステット

 

 見つかったのはセクステットまでで、セプテット(7

人)はありませんでした。 ところで、この花はすごく

良い香りがするんですよ! 清楚な白い花に似合った、

清々しい香りです。 出会う機会があったら、ぜひ香り

も嗅いでみて下さい。

 

香りに誘われて? こんな虫も訪れていました
香りに誘われて? こんな虫も訪れていました

 

 

 シライトソウは、お世話になっている岐阜県の花友のOさんが

植物に興味を持つきっかけとなった花であるというエピソードが

あり、また私たちが2012年に関東地方に咲く変種、アズマシライ

トソウを初めて見ることができて以来、その母種であるシライト

ソウをぜひ見たいと思っていたのです。 今年(2014年)念願

叶って初対面を果たすことができました。 自生地の情報を下さ

いました、静岡県のMさんと愛知県のHさんにこの場を借りて御

礼申し上げます。 ありがとうございました。

 

2014.10.05 掲載

 

 

コメント: 4 (ディスカッションは終了しました。)
  • #1

    みちほ (日曜日, 05 10月 2014 09:47)

    花はやっぱり自然のなかで見るのが一番ですね!
    私も自然園という場所では見たことがありますが、ここまで詳細に詳しく眺めたことはありませんでした。 花はなんて複雑に進化しているのでしょうか・・・
    こんど見るときには香りも確認しなくてはなりませんね(笑)
    それにつけても、良き花友さんをお持ちで羨ましいですが、それもこれも花さんぽさんの熱意と想像しております。 おかげ様でよい勉強をさせていただきました。
    カメラはやっぱり、あれですか(笑)
    追・・・PC操作も半端ない技術をお持ちですね! 素晴らしいです!

  • #2

    hanasanpo (日曜日, 05 10月 2014 14:30)

    はい、花は自然の中に咲く姿が、間違いなく一番美しいです!
    このホームページを通じてたくさんの花友さんができまして...
    みなさん素晴らしい方たちなので、ホームページを始めて本当によかったと思います。
    今年は何度かその花友さんたちと一緒に花散策する機会に恵まれ、幸せな年でした(まだ3ヶ月弱残っていますが)。

  • #3

    いにしえ人 (日曜日, 05 10月 2014 16:01)

    「カライトソウ」ではなく「シライトソウ」なんですね。
    咲いたばかりの新鮮な白さがひときわ鮮やかです!(^^)!

    私も「みちほさん」と同じで微に入り細に亘る観察に
    とても感心しています。
    もうここまで来ると植物学者の域と言ってもいいですね。
    もっとも私は高山植物は大好きですがメインが登山
    ですのでせいぜいマクロ撮影するのが精一杯です。

  • #4

    hanasanpo (日曜日, 05 10月 2014 17:05)

    ありがとうございます。
    でも植物学者なんてとんでもない、ただの花好きです。
    ただ「キレイだね〜」と眺めるだけもいいと思います。でもほんの少し近づいて
    見ると、意外な発見があったりして、そこが楽しいです。