イズコゴメグサ

 

伊豆小米草 ハマウツボ科 コゴメグサ属

Euphrasia insignis subsp. iinumae var. idzuensis

日本固有種  絶滅危惧1B類 (Endangered)

イズコゴメグサ  2014.10.19 静岡県
 イズコゴメグサ  2014.10.19 静岡県

 

花期も終わりに近づき、台風が2つも通り過ぎた後。

わずかながら、頑張って咲き残っていてくれました。

 

イズコゴメグサ

 

 東海地方・伊豆半島・箱根に分布する、高さ10〜30cmの1年草です。

葉緑体を持ち自分でも光合成を行ないますが、根の一部を他の植物の根に

食い込ませて養分を奪う性質も併せ持つ、半寄生植物です。

 

イズコゴメグサ

 

 茎は中部でよく分枝します。 葉は対生し倒卵形で長さ

5〜10mm、幅3〜8mm。 3〜5対の鋭鋸歯があります。

 

イズコゴメグサ

 

花冠は唇形で上唇は2裂、下唇は3裂し黄色の班があり

ます。 茎は茶褐色で、白色の微毛が生えていました。

 

イズコゴメグサ

 

 観察した花では上下の長さは約9mm、下唇が上唇より

倍近く長い。 幅も約9mmでした。 図鑑には「長さ約

1.2cm」とありましたが、それより少し小さい。

 

イズコゴメグサの花の正面-1
 イズコゴメグサの花の正面-1

 

 上唇には全体に白色の微毛が生えています。 下唇にもありますが、上唇より少ない印象。 ただし、下唇の基部付近には、上唇よりずっと長い毛が生えています。 下唇の黄斑の形は、花により微妙に異なっており、個性がありました。

 

イズコゴメグサの花の正面-2
 イズコゴメグサの花の正面-2


雄しべは4個で、上唇の内側沿いに伸びます。 4個のうち2個が長い。

 

イズコゴメグサの花の側面-1
 イズコゴメグサの花の側面-1

 

葉・苞・萼の区別が難しいですね。

 

イズコゴメグサの花の側面-2
 イズコゴメグサの花の側面-2

 

 伝統的なの分類体系では、ゴマノハグサ科となる植物です。 本州・四国・九州に広く分布する、ミヤマコゴメグサの変種とされています。 ミヤマコゴメグサは地域ごとに少しづつ形が異なる亜種が存在し、大きくは以下の2群に分類されるそうです。 しかし両者の中間形もいて、はっきりした区別は難しいそうです。

 

Ⅰ群(Subspecies insignis):中部地方北部〜東北地方に分布

 全体がやや繊細で、分枝した枝は細い。

 ホソバコゴメグサ、マルバコゴメグサ、トガクシコゴメグサ、マツラコゴメグサ

 などがあります。

 

Ⅱ群(Subspecies iinumai):中部地方南部〜四国・九州にかけて分布

 全体がやや大型で、茎はよく分枝し、枝は太い傾向があります。

 イブキコゴメグサ、キュウシュウコゴメグサ、イズコゴメグサ、トサコゴメグサ

 などがあります。

 

 本種は東海地方・伊豆半島・箱根に分布しますが、Ⅱ群に含まれ、その変種であるという位置づけです。 学名のEuphrasia insignis subsp. iinumae var. izuensisは、ミヤマコゴメグサ(Euphrasia insignis)の亜種(subspecies iinumae)の変種(variant izuensis)となります。 iinumaeは江戸時代の本草学者・飯沼慾斎で、変種名 izuensisに自生地の「伊豆」が入っています。

 

快晴でした。主役は右下に。
 快晴でした。主役は右下に。

 

 環境省が絶滅危惧1B類に指定している植物です。 自生地となる草原の減少などで、絶滅の危機にさらされています。 2012年の環境省第4次レッドリストでは、上記のマツラコゴメグサと、オオミコゴメグサ、クモイコゴメグサは「絶滅」とされています。 このとき実に32種もの維管束植物が絶滅したとされましたが、マスコミなどで大きく報道されることはありませんでした(唯一、哺乳類のニホンカワウソの絶滅が大きく報道されました)。 本種がその絶滅種のリストに載る日が来ないことを切に願います。

 

2015.01.27 掲載