山地の冷温帯の林床に非常に稀に生えるスミレです。 長野県の2
箇所でのみ自生が確認されていましたが、うち1箇所では絶滅したと
され、現在残された自生地はこの1箇所のみです。 とうとう出会う
とができました!
葉の形状はスミレとは思えないものでした。 タデ科の植物に似て
いることが、名の由来です。 花期は5下旬〜6月上旬。
高さは25〜35cm。 茎を直立させます。 花期に根生葉は
ありません。 茎の下方の葉は退化し、鱗片状になっています。
茎の上方の葉は広倒披針形で、葉の基部から葉柄に向けて連続
的に狭まります。 全体的に毛は少ないですが、茎には微毛が
ありました(托葉の写真参照)。
![](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=480x10000:format=jpg/path/sf8a8d00d654c7ec1/image/i38918c99c2146def/version/1414988187/image.jpg)
葉は長さ7〜10cmで、低い鋸歯があります。
スミレとは思えない葉の形です。
花がなかったら、スミレとは思わなかったと思います。
托葉は線状披針形で櫛の歯状に裂け、タチツボスミレを
連想させます。 花のない時期でも、これを見ればスミレ
の仲間であるとわかるかも知れません。 茎には白っぽい
微毛が生えていました。
さて、お花です。 この花はスリムで、ちょっとシャープな印象です。
スラっと立ち上がり、実に気品のあるスミレです。 こちらの
花は上弁が立ち上がり、凛とした感じ。 上弁・側弁ともに幅が
狭いためにシャープな印象を受けます。 唇弁は他より短い。
唇弁には紫色の条が入ります。 側弁にもわずかに入っています。
側弁の基部には毛が生えています。 柱頭はこん棒状で無毛です。
上の写真は1メッシュ約1mmですが、精度が高くない
点はご勘弁を。 花の左右の幅は、およそ28mmでした。
萼片は挟披針形で細長く、先端はとがります。 距は短く、5mmほど。
ちょっといい加減な実測値ですが、唇弁の
先端から距の後端までは、約17.5mmでした。
![タデスミレの花 上面](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=620x10000:format=jpg/path/sf8a8d00d654c7ec1/image/ie19b57e6bb121b9b/version/1414981459/%E3%82%BF%E3%83%87%E3%82%B9%E3%83%9F%E3%83%AC%E3%81%AE%E8%8A%B1-%E4%B8%8A%E9%9D%A2.jpg)
真上から花を見ると、こんな感じです。
タデスミレには、独特な爽やかな香りがあるそうです。 しかし
撮影に没頭していて、うっかり香りを嗅ぐのを忘れました。 家に
帰ってからそのことに気づき、床の上を転げまわって悔しがりまし
た(ちと、大袈裟)。
今回、もう少し良いアングルで撮影できる可能性もありました。 しかしそれはどんなに注意しても、自生地を踏み荒らす結果になると思われました。 そんなときには、どうするか? きっぱり、諦めます。
やっとの思いで情報を得て、高速代やガソリン代を費やし、何時間もかけてたどり着いた自生地。 少しでもよい写真を撮りたいのは、誰しも同じ。 しかしここで「何を最優先にすべきか?」を考えないといけませんね。 やはり「よい写真」より優先すべきは、自生地の保護であると思います。 どんなに注意しても、近くで撮影すること自体、植物に何らかの悪影響を与えていることを肝に命じることにしています。 特に本種のように超希少な植物に対しては、特別な配慮が必要であると感じました。
自生地の情報を提供下さいました、北信州のHさんに感謝いたします。
2014.11.03 掲載
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タデスミレが掲載されたページ
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