ランヨウアオイ

 

乱葉葵 ウマノスズクサ科 カンアオイ属 カンアオイ節

Asarum blumei

日本固有種

ランヨウアオイ  2015.04.29 東京都 (このページの写真すべて)
 ランヨウアオイ  2015.04.29 東京都 (このページの写真すべて)

 

 山地や丘陵の林内に生える、常緑の多年草です。 和名の「乱葉」は、葉に白色の雲紋があるものが多いことが由来ようです。 関東地方西南部、山梨県南部、静岡県に分布します。 私たちが見ることができたのは、住宅地と山地の境界線のような場所の里山でした。 ネット上の情報を頼りに探索し、今年(2015年)に初めて見ることができました。


 花期は3〜5月。 関東地方西南部・静岡県・山梨県・神奈川県・静岡県に分布します。 関東地方西南部に自生するカンアオイ属は、本種とカンアオイ(カントウカンアオイ)、そしてタマノカンアオイだけです。

 

ランヨウアオイ


 葉は広卵形、卵状楕円形またはほこ状広卵形で、長さは6〜15cm、幅は4〜8cmとやや大きい。 先端は鈍頭〜やや尖り、基部は深い心形で、両側片がやや外側に耳状の張り出す傾向があります。 葉の表面は光沢があります。 白っぽい雲紋があるものもありましたが、ここではそれがあまり目立たないものが多かったです。

 

ランヨウアオイの葉の表面
 葉の表面
ランヨウアオイの葉の裏面
 葉の裏面

 

 左上は葉の表面、右上は葉の裏面の様子です。 図鑑には「どちらの面も脈上や縁に短毛がある」とあったのですが、肉眼ではわかりませんでした。 画像を拡大してもよくわからなかったので、よほど短い毛なのでしょう。 無毛、と言ってしまってもよいほどだと思いました。 尚、ランヨウアオイの葉はギフチョウの幼虫の食草としても知られています。

 


葉柄はけっこう長く、立ち上がっていると高さは10〜15cmほどあります。


ランヨウアオイの花

 

 花の時期は3〜5月です。 葉柄の付け根に、

淡紫褐色の花を地面に接するように咲かせます。

 

ランヨウアオイの萼の開口部の直径は約40mm(大きめの花)
 萼の開口部の直径は約40mm(大きめの花)
ランヨウアオイの萼筒部の直径は約15mm
 萼筒部の直径は約15mm

 

 花の大きさは個体差があります。 萼裂片の差し渡しが25mmほどのものが多かったですが、その中で特に大きく見えた花の寸法を測ってみました。 開口した萼裂片の差し渡しで40mm近くありました(左上)。 萼筒の直径は約15mmでした。

 

ランヨウアオイの花の側面
 花の側面


 花の側面です。 萼筒は樽型で長さ10〜15mm、上部がわずかにくびれます。 色は淡緑白色で、縦の線状のくぼみが目立ちます。 全体が無毛です。


ランヨウアオイの花の正面
 花の正面


 花の正面です。 萼裂片は三角状卵形。 萼筒口はやや狭く、色が濃い。 萼筒内面には、暗紫色の格子状の突起が見えます。 さらに近寄ってよく見ましょう。


ランヨウアオイの萼筒内面の突起
 萼筒内面の突起


 萼筒の内面は、白っぽい下地に暗紫色の隆起線が縦横にあり、格子状になります。 格子状といっても、障子の組子のようにきれいに並んでいるとは限らず、隆起線が途中で切れてしまっていたりする様子もわかります。 どちらかというと縦の隆起線はしっかり入り、横の隆起線が切れ切れになっているように見えました。 これも個体差があるのでしょう。


ランヨウアオイの花柱や雄しべはの様子-1
 花柱や雄しべはの様子-1


 花柱が見えます。 花柱は6個あり、根本で合着していて、上部では開いて柱頭は外側を向きます。 雄しべは黒っぽく見える部分で、12個あります。 上の写真では4個ほどが見えます。


ランヨウアオイの花柱や雄しべはの様子-2
 花柱や雄しべはの様子-2

 

 黒っぽい部分が雄しべの葯で、外側を向いています。 この花では葯が裂開し、白っぽい花粉を出しています。

 

 

2015.11.23 掲載

 

 

コメント: 2 (ディスカッションは終了しました。)
  • #1

    矢嶋 松年 (金曜日, 09 9月 2016 11:15)

    私は都の緑地保全地域で稀少植物の保護にボランテア活動で携わっているものですがランヨウアオイのタネからの栽培は可能でしょうか。

    また3頃に月に開花したあとタネが実るのはいつ頃でしょうか。お知らせ願えれば
    幸いです。





  • #2

    HiroKen (金曜日, 09 9月 2016 15:19)

    矢嶋様

    当サイトの「ごあいさつ」のページにある当サイトのポリシーはご覧になっていないようですが、当サイトには栽培に関する記述は一切ありません。その理由は、園芸目的の採集・採取という名目の「盗掘」を助長したくないという意味もあります。
    種子の熟す時期や、種子からの栽培が可能かとお尋ねですが、それはこれから自然に生えるランヨウアオイから種子を採集して、栽培しようという意図としか思えません。「希少種の保護」という大義名分があるのでしょうが、このページはあらゆる人が閲覧可能です。当然、世の中に少なからずいる、いわゆるカンアオイマニアの方も見に来るかも知れません。このため、二重の意味で、ここでお答えすることはできません。
    ボランティアであれ、希少種の保護という任を担っていらっしゃるのであれば、そういったことまで慎重に考慮された方がよいと思います。また、その植物の性質を十分に理解されていないのであれば、たとえ保護目的といえど、安易な種子の採集はやめていただきたいと思います。種子の採集は、植物のその地でのその後生育に重大な影響を与える可能性があります。