カキノハグサ

 

柿の葉草 ヒメハギ科 ヒメハギ属

Polygala reinii

日本固有種

カキノハグサ  2014.06.08 愛知県 alt=580m
カキノハグサ  2014.06.08 愛知県 alt=580m

 

 山地の林下に生える多年草です。 ここは間伐されているものの、

やや薄暗い杉林の斜面でした。 図鑑ではやや乾いた場所に生える

とありましたが、杉の枯れ葉が積もった柔らかい地面は、さほど乾

燥しているようには見えませんでした(時折小雨が降っていたせい

かも知れませんが!)。

 

カキノハグサ

 

 高さは20〜35cmほど。 ダーク系の色調の林下ではよく目立つ、

黄色い花を頂生させます。 和名は葉が柿の若葉に似ていることに

由来するそうです。 確かに葉の形や脈の入り方は似ていると思い

ました。

 

カキノハグサ

 

 本州の近畿・中部地方西部と静岡県に分布。 葉は互生し、

短い柄があります。 長さは8〜17cm、幅3〜7cm。  薄く、

鋸歯はなく、先は急に尖り、基部は鋭形〜くさび形です。

 

カキノハグサ

 

 花期は5〜6月。 総状花序の長さは2〜5cm。

 

カキノハグサ

 

 不思議な形の花です。 でも如何にも

ヒメハギ科っぽい雰囲気を漂わせています。

 

カキノハグサ

 

 図鑑には「萼片は5個、花弁は3個」とありますが、

さてどれがどれやら? ではじっくり見てみます。

 

カキノハグサの花の構造(花弁、萼片、竜骨弁、付属体)
カキノハグサの花の構造

 

まずは、5個ある萼片から。

萼片①②:緩やかに反り返って直立する、花弁状の2つの大きな

     萼片です。 まるでウサギの耳のようにも見え、とても

     目立ちます。 長さは花弁と同じです。 広倒披針形の

     お椀のような形状。 ツボミのときは花弁や、その中の

     もっと大切なものを守っていたのでしょう。     

萼片③ :薄い黄緑色をしたこの萼片は、背部が湾曲し丸く見える

     ことが特徴です。 萼片④⑤よりやや長い。

萼片④⑤:長楕円形をしたこの2個の萼片は、下側にあるので目立ち

     ません。

 

そして、3個の花弁。 全体がやや上向きに反り返ります。

花弁①②:上方にあり、花弁③とともに、基部で合着しています。

     長さは約2cm。 先端部では、花弁①②が重なり合って

     います。 左右の花弁のどちらが上になるかは、決まっ

     ていないようです。 後の写真でも示します。

花弁③ :下方にあり、先端部の形状は花弁①②と異なり丸みを

     帯びており、更に先端部にはモシャモシャした房状の

     付属体があります。 竜骨弁とも呼ばれますが、2枚の

     花弁からなるマメ科の竜骨弁とはちょっと違った感じです。

 

花弁①〜③の中に雄しべ・雌しべがあるのですが、残念ながら見る

ことはできませんでした。 でもそれら以外は図鑑の解説と実物の

各パーツが明確になり、スッキリしました。

花の構造がわかったところで、あと何枚かの写真をお楽しみ下さい。

 

カキノハグサ 開花直前の花(▼部)
カキノハグサ 開花直前の花(▼部)

 

萼片③がよく見えるアングルを1枚。 ぷっくり丸い形状がよく見えます。

なお、▼印の2個の花は未開花で、まだ萼片①②が合わさったままです。

 

カキノハグサの花弁の重なり具合
カキノハグサの花弁の重なり具合

 

前述のように花弁①②は先端部で重なり合いますが、

上側になるのは右・左どちらの場合もありました。

 

カキノハグサの花の先端部の付属体
花の先端部の付属体

 

 竜骨弁の先端の付属体は、虫をおびき寄せる役割を

担っていると思われますが、その形状も個性豊かです。

上の花では、6個の角状の突起が合わさって房状になっ

ています。

 

カキノハグサの花の先端部の付属体
花の先端部の付属体

 

この花では角状突起が4個です。 両手でピース v(^_^)v !

それにしても、グラデーションの美しい花です。

 

カキノハグサの果実 2013.06.30
カキノハグサの果実 2013.06.30
カキノハグサの蒴果は扁円形で直径10mmほど
蒴果は扁円形で直径10mmほど

 

 

 ヒメハギヒナノキンチャクなど、ヒメハギ科の花が大好きなので、カキノハグサもぜひ見たいと思っていました。 念願叶って、今年(2014年)初対面を果たすことができました 自生地の情報を下さいました皆様に感謝いたします。

 

2014.10.31 掲載

 

コメント: 5 (ディスカッションは終了しました。)
  • #1

    みちほ (日曜日, 02 11月 2014 21:10)

    こんばんは~
    先日は失礼しました! カキノハグサって綺麗な黄色ですね! 今だ未見です!
    こちらでは見られない花でしょうか? 情報がありません・・・
    読んでいたらヒナノキンチャクが出てきてついうっかりとそちらへコメントしちゃいました。 同じ科同じ属とは思えない印象の違う花ですね・・・
    いつも細かい解説に関心です! なかなか頭に入らず、何度も拝見しています。
    カキノハグサ見ることが叶ったらまた詳しいことを拝見させていただきますね!

    花も終盤ですが、今咲き残りの野菊などを見る機会があります。が、葉とか綿になった花を見てると何だろ?になっちゃいます(笑)
    いかに細かいところを見ていないか反省です。 花さんぽさんみたいに研究して観察力を高めなくてはと思っています。

  • #2

    hanasanpo (月曜日, 03 11月 2014 01:32)

    いつもコメントをありがとうございます。
    カキノハグサは、静岡県から近畿地方に多いようです。
    図鑑の解説は花のどの部分を述べているのかわかりにくいこともあるので、そう思ったときは自分の勉強のためにも写真に図示するようにしています。

    野菊は、私たちも大の苦手です。散々調べた挙句に、「やっぱりわからない」となることが多いです。「日本の野菊」を書かれた、いがりまさしさんは本当にスゴイ方だと思います。

    花は終盤ですが、ページは更新し続けますので、また遊びに来て下さい。

  • #3

    佐藤紘昭(71歳) (水曜日, 08 6月 2016 08:30)

    関東地区にお住まいと記されてた記憶ですが、渥美半島や東三河山間部までもお訪ねになられ、花の部位の名まで解説戴きとても参考にさせていただいてます。ご夫婦で行動なされる境遇はさぞ恵まれていらっしゃるのでしょう。これからもお楽しみ下さいませ!(このカキノハグサは鳳来寺山でしょうか?)

  • #4

    HiroKen (水曜日, 08 6月 2016 20:50)

    佐藤様、コメントをありがとうございます。
    東京の小平市に在住しておりますが、花友さんが静岡・愛知・岐阜の各県にいらっしゃり情報をいただけるのと、新東名高速ができたのでアクセスがよい、そしてもちろん、多くの花がある、などの理由で、最近は東海地方に足を運ぶ機会が多くなっています。夫婦で趣味が共通であると、週末の計画を立てるのにまったくモメることがないという、大きな利点があります。
    これからも楽しみながらページを作って行きますので、どうぞお気軽に遊びに来て下さい。

  • #5

    HiroKen (水曜日, 08 6月 2016 20:54)

    追伸:このカキノハグサは、鳳来寺山で見たものではありません。