エチゴトラノオ  シラゲエチゴトラノオ

 

オオバコ科 ルリトラノオ属

   越後虎の尾 Veronica kiusiana Furumi var. maritima 

 白毛越後虎の尾 Veronica kiusiana Furumi var. canescens

日本固有種

 エチゴトラノオ  2012.07.27 新潟県
 エチゴトラノオ  2012.07.27 新潟県

 

 ようやくこの花を見ることができました。 7月14日にもここ

新潟県の海岸に訪れ、花友さんと一緒に探したのですが、見つけ

ることができませんでした。その後花友さんから「見つけたヨ!」

との連絡を受け、どうしても見たくてまたやってきたのです。

教えていただいた海岸の岩山の斜面で9株を確認することができ

ました。

 

 北陸地方から東北地方の日本海側の海岸に自生する、大型の

多年草です。 高さは50〜90cmになります。 自生地は限ら

れ、新潟県では準絶滅危惧、及び特別地域内指定植物とされお

り、希少な植物であると言えます。

 

 エチゴトラノオ  2012.07.27 新潟県
 エチゴトラノオ

 

 葉は対生し、やや肉質で広卵形、先端はややとがり、縁には

低く鋭い鋸歯があります。 表面には光沢があり無毛です。茎

の先に総状花序をつけます。

 

 和名のトラノオは花序を虎の尾に見立てたものです。 トラ

ノオと名につく植物は、サクラソウ科やタデ科になどにいくつ

かあります。 その中で当サイトに掲載されている植物を本ペ

ージ末尾にまてめてみました。 よろしかったら、後でご覧く

ださい。  なお、本種はAPG-Ⅲ植物分類体系ではオオバコ科に

なります。 旧分類体系では、ゴマノハグサ科でした。

 

 エチゴトラノオ  2012.07.27 新潟県
 エチゴトラノオ

 

 花は花序の下から上に向かって咲きます。 上の花では花序

の下部は終わり、花は取れてしまっています。 中部はほどよ

く咲き、上部はまだ蕾です。

 

 非常に暑い日でした。 滝のように汗を流しながら、不安定

な岩場の上で撮影しました。 おもしろいことに、ネットで検

索すると同じように「汗だくになって撮影した」とあるサイト

がいくつか見つかりました。 みなさん同じ思いをして観察し

たのだなあと感慨に耽ってしまいました。

 


シラゲエチゴトラノオ


 シラゲエチゴトラノオ  2012.07.27 新潟県
 シラゲエチゴトラノオ  2012.07.27 新潟県
 エチゴトラノオ  2012.07.27 新潟県
 シラゲエチゴトラノオ

 

 上の個体は今回見ることができた中で一番大きく、そして接近が楽な場所にいました。 しかし... 他の個体と比べると、なんだか様子が違うように感じます。 花序の先が垂れているし、葉もやや大きめで下向きになっています。 撮影時には、栄養状態や、開花時期の関係で違って見えるのだろうと、あまり気にしませんでした。

 

 ところが、このページを作りながら写真を詳細に調べたら、他のエチゴトラノオとの相違点が見つかったのです。 なんと葉の両面に毛が生えているのです。 これはシラゲエチゴトラノオかも知れません。

 

 シラゲエチゴトラノオと思われる個体の葉
 シラゲエチゴトラノオと思われる個体の葉
 左の赤枠内の拡大 表面に白っぽい毛がある
 左の赤枠内の拡大 表面に白っぽい毛がある

 シラゲエチゴトラノオ 上と同じ個体です
 シラゲエチゴトラノオ 上と同じ個体です
シラゲエチゴトラノオ  裏面にも短く白っぽい毛が密に生える
 裏面にも短く白っぽい毛が密に生える

 比較のため再度エチゴトラノオ登場 葉や茎に毛はなく葉に光沢があります
 比較のため再度エチゴトラノオ登場 葉や茎に毛はなく葉に光沢があります

 

 エチゴトラノオは葉に毛が無いのが特徴なのに、毛があるとは... いろいろ調べた結果、佐渡にシラゲエチゴトラノオと呼ばれる、葉の両面に短毛がやや密に生える一群がいることがわかりました(註1)。 この海岸から佐渡は、すぐ目と鼻の先です。 シラゲエチゴトラノオは佐渡の特産とされていますが、佐渡にはエチゴトラノオもいるそうです。

 

 そうであるなら、佐渡の対岸である新潟県の本州部にシラゲエチゴトラノオがいてもおかしくないと思います。 この海岸にはエチゴトラノオとシラゲエチゴトラノオの両方が自生しているのではないでしょうか。  植物を識別する上で毛の有無は非常に重要なポイントなので、おそらく間違っていないと思いますが... 万一間違っていたらごめんなさい。 どなたか詳しい方がコメントを下さると助かるのですが。 よろしくお願いします。

 

対生する葉の基部からも花序が伸びています。この辺の構造もエチゴトラノオと少し違うような... 栄養状態の差なのでしょうか。

茎には白っぽい屈毛がびっしり生えていました。


シラゲエチゴトラノオ
 シラゲエチゴトラノオ

 

 青紫色の美しい花です。 花はエチゴトラノオと見分けが

つかないほど似ています。 自生地は大変な暑さでしたが、

この花の涼し気な色で少し救われました。 花冠は4裂して

基部が筒状で、大きく開いて杯状になります。 雄しべは2

個で、花冠より長く突き出ます。 花柱は細長く、先端がわ

ずかに膨らんで柱頭がつきます。

 

シラゲエチゴトラノオ
 シラゲエチゴトラノオ

 

花喉部には、白色の軟毛があります。

 

(註1) 日本の野生植物III 平凡社

 

 

当サイト内の「トラノオ」が名前につく花一覧(2012.08.24現在)

[和名 科名 掲載ページ
アブクマトラノオ タデ  Dairy-Hiroダス2011 3月20日 被災地の復興を願う
イブキトラノオ タデ  花さんぽ2007 3月5-8日 野反湖百花繚乱(その2)
エチゴトラノオ オオバコ  (本ページ)
オカトラノオ サクラソウ  野反湖 8月の花 「ア行」の下から3行目にあります
サワトラノオ サクラソウ  野山の花アルバム サワトラノオ
トウサワトラノオ サクラソウ  野山の花アルバム トウサワトラノオ
ヌマトラノオ サクラソウ  花さんぽ2010 7月3日 渡良瀬遊水地
ノジトラノオ サクラソウ  花さんぽ2010 7月3日 渡良瀬遊水地
ハルトラノオ タデ  野山の花アルバム ハルトラノオ
ミズトラノオ シソ  野山の花アルバム ミズトラノオ
ムカゴトラノオ タデ  Dairy-Hiroダス2012 8月8日 夏休み花さんぽ 

 

2012.08.25 掲載

2013.10.05 APG体系への移行に伴い、ゴマノハグサ科からオオバコ科に変更

 

コメント: 4 (ディスカッションは終了しました。)
  • #1

    BOGGY (日曜日, 26 8月 2012 22:57)

    トラノオって沢山あるのですね。
    エチゴトラノオの色はきれいですね。
    私が見たのは、イブキトラノオ、オカトラノオ、ハルトラノオの三種だけです。
    昨日、おくちゃんにレンゲショウマを見に連れて行って貰いました。
    とても魅力的ですっかり気にいりました。
    レポートこれから書きます。
    ナツエビネのブログにコメントありがとう。

  • #2

    hanasanpo (月曜日, 27 8月 2012 21:12)

    「トラノオ」がつく植物はけっこうあるのだと、私も今さらながら思いました。 他にもキタダケトラノオやヤナギトラノオがいますが、まだ見たことがありません!
    「虎の尾」と呼ぶには可愛すぎるということで、「ミズネコノオ」というのもいますよ。下にリンクを作りましたので、気が向いたらご覧下さい。

    レンゲショウマが見られてよかったですね! 私たちも昨日山で出会いましたが、残念ながらあまりよい状態ではありませんでした。
    エレガントなナツエビネ、拝見しました。花つきもよく、羨ましいです。私たちもおくちゃんに連れて行ってもらいましたが、場所がさっぱりわかりません。またいつかおくちゃんにせがんで連れて行ってもらおうと思います。

    世界に一つの手作りバッグも拝見しました! 本当にすばらしいですね!

  • #3

    中西弘樹 (火曜日, 02 8月 2016 08:19)

    エチゴトラノオはふつう無毛で、葉にやや光沢がありますが、シラゲは有毛で、その点ではかなり違いますが、どちらも海岸植物が強い光を防ぐための工夫で、この仲間のハマトラノオでも同じ現象が見られます。場所や個体によって強い光沢があったり、白毛が生えていたりします。よく観察すると連続的ですし、若い時は白毛があり、成長すると無毛で光沢をもったりもします。分類学的には区別する必要がないと思いますが、エチゴトラノオとシラゲエチゴトラノオは品種扱いとなっています。海岸に多いカワラヨモギも白毛をもっていて白い個体も、毛がほとんどなく、緑の個体もあったりします。しばしば海岸植物に見られる適応でしょう。

  • #4

    HiroKen (火曜日, 02 8月 2016 21:50)

    貴重なご意見をありがとうございました。 強烈な紫外線・高温・塩水・強風・乾燥... 海岸は、動くことのできない植物にとってとてつもなく過酷な環境ですね。 そのような生活環境でも様々な戦略を立てて、たくましく生き抜いている姿には感動を覚えます。 葉の形状・光沢の有無・毛の有無などのそれぞれの植物が持つ特徴には、そのすべてに意味があるのに違いありませんね。