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. 4月17日(日)    下総の美しい里山

 

本日はチーバへ遠征です。

昨年、当ホームページのクマガイソウのページを見て下さった

Sさんより、メールを頂きました。

千葉県某市でクマガイソウの保護活動をされているそうです。

また、ここのクマガイソウの遺伝子を解析したのは、

私たちの花友さんの研究者でありました。

 

花の開花に合わせていらっしゃいませんか? と誘ってくださいました。

開催される観察会に参加できそうであったので、

今回は楽しみにお出かけです。

 

我が家から真東の方向に位置する、とある里山。

都心を横断して向かいます。

二人とも初めて訪れます。

 

とても美しく清々しい里山が残されております。

近所なら毎日散歩したい気分です。

観察会参加者は、20人くらいはいらっしゃいました。

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ウワミズザクラが満開でお出迎えしてくれました。

 

ウワミズザクラ (上溝桜) バラ科 ウワミズザクラ属 日本固有種  見事な花付きだった
ウワミズザクラ (上溝桜) バラ科 ウワミズザクラ属 日本固有種  見事な花付きだった
見頃のウワミズザクラ。 花序がある枝の途中に葉があるが、似たイヌザクラはここに葉がない
見頃のウワミズザクラ。 花序がある枝の途中に葉があるが、似たイヌザクラはここに葉がない

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緑地の中に入っていきます。

ウラシマソウがわんさか生えて、いくつか花が咲いている。

ジュウニヒトエもたくさん・・

ジュウニキランソウと思える株もあった。

ジロウボウエンゴサクもびっしり~ すごい数だ。

 

Sさんらが、それぞれの植物の解説をしてくれました。

参加者の皆さんは熱心に聞いておられましたが、

花花モードになった私は、ちょっとだけ単独行動してました。

 

タチツボスミレやジュウニヒトエなどの花がたくさん咲いていた
タチツボスミレやジュウニヒトエなどの花がたくさん咲いていた
ジュウニヒトエ (十二単) シソ科 キランソウ属  元気そうな株が多かった
ジュウニヒトエ (十二単) シソ科 キランソウ属  元気そうな株が多かった

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ジュウニキランソウと思える個体。 ちょっと遠かった
ジュウニキランソウと思える個体。 ちょっと遠かった

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ジロボウエンゴサク (次郎坊延胡索) ケシ科 キケマン属  数が多くて驚いた。環境が良いのだろう
ジロボウエンゴサク (次郎坊延胡索) ケシ科 キケマン属  数が多くて驚いた。環境が良いのだろう

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イチリンソウやニリンソウも咲いていた。

 

イチリンソウ (一輪草) キンポウゲ科 イチリンソウ属 少し元気がなかっった
イチリンソウ (一輪草) キンポウゲ科 イチリンソウ属 少し元気がなかっった

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いよいよクマガイソウ!

最初に見せてくれた場所は十数株あったにもかかわらず、

たった1株のみになってしまったそうだ。

急激に減少した原因は・・盗掘以外考えられないそうです。

 

観察会の様子。 2015年に10株以上あったこの場所は、盗掘によりたった1株になってしまった。
観察会の様子。 2015年に10株以上あったこの場所は、盗掘によりたった1株になってしまった。
クマガイソウ (熊谷草) ラン科 アツモリソウ亜科 アツモリソウ属
クマガイソウ (熊谷草) ラン科 アツモリソウ亜科 アツモリソウ属

 

盗掘には本当にうんざりだ・・

長く多くの人を楽しんでもらうために、

そっと見守ることはできないのか!

自分の庭や植木鉢に植えて、いつまで咲かせられるってんだあー。

 

そして更に奥に進んでいくと、とても良く整備された竹林の中に

クマガイソウが群生していた!

 

 

ここのクマガイソウは、植栽ではありません。

2012年頃、竹藪の中に花をつけていない小さな葉が観察されたそうです。

民有地であったため、まず地主さんを探すことから始まり、

3年かけてようやく地主さんが特定できたそうです。

しかし始めはなかなか理解が得られず、何度も交渉して

ようやく竹藪の手入れが許可されたとのこと。

 

竹林内の所々に集団を作って咲くクマガイソウ
竹林内の所々に集団を作って咲くクマガイソウ

 

ボランティアの皆さんで竹藪を手入れし続け、竹藪から

竹林と呼ぶにふさわしい状態になってきた3年後に

7輪が初の開花をしたそうです。

 

その後も竹林の手入れを続け、クマガイソウは増えていったそうです。

開花数は2018年:30、2019年:49、2020年:78、2021年:150

そして今年2022年は200株の開花を予想していたところ、

なんとドンピシャリ当たって200株が開花したそうです。

 

このような20株前後の集団がいくつもあった。 色合いや開花具合はそれぞれ異なって見えた
このような20株前後の集団がいくつもあった。 色合いや開花具合はそれぞれ異なって見えた

 

全国には、ここよりもはるかに規模が大きい

クマガイソウの自生地があります。

中には、地上茎の数が2桁も多い場所もあります。

しかしそれら多くの自生地と比較して、

ここのクマガイソウには、抜きん出て素晴らしいことがあります。

 

それは遺伝子の多様性です。

福島大学(現)の山下由美先生の遺伝子解析の結果、

ここのクマガイソウは G/N=1.00であるとわかりました。

ここでG:ジェネット数(遺伝子のタイプ種)、N:検体数(36)です。

G/Nが1に近いほど多様性に富んでいることになります。

 

ここのクマガイソウは調査した36検体すべてが異なる遺伝子を

持っており、株分けで増やしたものではなく、

別々の種子から育ったものとわかりました。

 

比較のための例として、福島市のある自生地は地上茎約3万株、

開花数約5千という大規模なものですが、

G/N=0.60で、多様性に富んでいるとは言えません(N=30)。

いわき市の保全地では地上茎約3万5千、開花数約3万 では、

G/N=0.16で、多様性が低いといえます(N=30)。

 

遺伝子の多様性という面から見ると、ここはおそらく日本一です!

 

健康そうなクマガイソウ
健康そうなクマガイソウ

 

花の構造の説明を突然Sさんから振られて、相方は少し慌てていました。

なんとか説明できたようですが、いきなり合萼片やら走光性の話をして、

果たして参加者の方々に理解されたのかどうか?

 

クマガイソウの大きな袋状の唇弁には半透明の窓があり、中に入った昆虫を誘導しているのかも
大きな袋状の唇弁には半透明の窓があり、中に入った昆虫を誘導しているのかも

 

どうかここを守って、次の世代に繋げて欲しいものです。

(課題は山のようにあると思いますが)

小学生の課外授業に、地元の森の大切さを教えて頂きたい。

久し振りの遠征。 楽しい観察会でした。

森のたけのこを購入させていただきました。

 

チーバの美味しいものやら、新鮮野菜など買っていきたかったのだけれど・・

中途半端な時間だったので、断念して帰路に。

 

貴重な自生地をご紹介くださり、本当にありがとうございました。

どうかこの森が維持して行けますようにと願います。