ホソバノキソチドリ

 

細葉の木曽千鳥 ラン科 ツレサギソウ属

Platanthera tipuloides (L.f.) Lindl. subsp. tipuloides var. sororia (Schltr.) Soó 

 奥の間   

ホソバノキソチドリ 2005.07.17 群馬県 野反湖
ホソバノキソチドリ  2005.07.17 群馬県 野反湖

 

 ランの中では、比較的よく目にできる種と思います。 でも

出会えると嬉しいものです。 亜高山帯の日当たりの良い草地

に生える、高さ20〜40cmの多年草。 花色は黄緑色で、あま

り目立つ方ではありません。 茎はやや太い印象です。

 

ホソバノキソチドリ 2010.07.25 志賀高原
2010.07.25 志賀高原

 

穂状の花序に多数の花をつけます。

 

ホソバノキソチドリの花の構造(背萼片、側花弁、側萼片、唇弁、距、花柄子房、苞) 2010.07.25 志賀高原
ホソバノキソチドリの花の構造    2010.07.25 志賀高原

 

 花は交互に別の方向を向いて咲いている印象です。 少し似たコバノトンボソウは、花の向きがほぼ同じ方向になることが多いので、この点が異なります。

 

 背萼片は卵形で、長さ2〜3mm。 側萼片は長楕円形で、背萼片より長い。 側花弁は、図鑑には「背萼片と同長」とあったのですが、背萼片より側花弁がやや長いことも多かったです。 背萼片と2個の側花弁は、蕊柱を守るように囲んでいます。

 

 唇弁はやや肉質な感じで、長さ5〜6mmで広線形です。 後方に反り返りますが、その度合は花により差異があります。

 

 ツレサギソウ属を見分けるのに距と苞も重要ですが、本種の距は長さ12〜17mmと長く後方に伸びます。 そして多くはやや下垂するか、やや前方に湾曲しますが、ほぼまっすぐのものもあります。 対してコバノトンボソウは距が上側に反り返るようになることが多いので識別ポイントの一つになりますが、中には反り返らず、下垂気味になるものもいるので、絶対的とは言えません。

 

 苞は線状披針形で、花柄子房と同じほどの長さがあります。 コバノトンボソウの苞は花柄子房の半分ほどしかないので、識別ポイントになります。

 

ホソバノキソチドリ 2005.07.18  群馬県 野反湖
2005.07.18  群馬県 野反湖

 

 上の個体は、唇弁が強く後方に反り返っています。

また距はやや下垂しているものもありますが、ほぼ

まっすぐ後方に伸びているものもあります。

 

 ところで、花柄子房はどれもねじれています。ホソ

バノキソチドリは、花柄子房が180°ねじれて唇弁が

花の下側につく、「標準タイプ」のランです。

 

ホソバノキソチドリ 2010.07.25 志賀高原
ホソバノキソチドリ  2010.07.25 志賀高原

 

蕊柱は平たく、白っぽい葯が2個並びます。

中央に見える小さな穴は、距の入り口です。

 

ホソバノキソチドリ 2005.07.18 群馬県 野反湖
2005.07.18  群馬県 野反湖

 

 距の中に泡のようなものが見えることがあります。

なぜこのようになるかはわかりませんが、距の中に

密が詰まっていることがわかります(円内)。

 

ホソバノキソチドリの葉  2005.07.17 野反湖
 2005.07.17 野反湖
ホソバノキソチドリの通常葉と鱗片葉
通常葉と鱗片葉
キソチドリの葉 2008.07.20 野反湖
 2008.07.20 野反湖

 

 名前から「葉の細いキソチドリ」と思ってしまいがちですがそうではなく、別種です。 キソチドリに似て葉がキソチドリより細いことが由来でしょうか。 よろしかったら、キソチドリのページもご覧ください(本ページの下にリンクあり)。

 

 葉は狭長楕円形〜線状楕円形で、長さ3〜7cm、幅1〜2cmです。 上の左の写真は、2つの株がくっつくように生えています。 中央の写真は葉の部分をトリミングしたものです。 矢印を振りましたが、下の2個が葉、上の3個が鱗片葉です。 鱗片葉は披針形で、2〜3個つきます。 右の写真は葉のアップです。 手が映り込んでいるので、おおよその大きさがイメージできるとよいのですが。 葉は目立たず、他の植物に隠れてしまうことが多いので、よい写真がありませんでした(言い訳!)。

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コバノトンボソウ 2009.08.03 八方尾根
コバノトンボソウ  2009.08.03 八方尾根

 

 コバノトンボソウは残念ながらよい写真がなく、専用ページを作れていません。 傷みかけた花ですが、本種と比較するため上の写真を掲載します。

 

 花の形はとてもよく似ています。 距が上方に反り返り、方が花柄子房より短いのがホソバノキソチドリとの相違点です。 但し、距は必ず上方に反り返るとも限らないので注意が必要です。

 

2013.01.16 掲載

 

 

コメント: 4 (ディスカッションは終了しました。)
  • #1

    工藤 眞也 (木曜日, 30 6月 2016 12:53)

    いつも、素晴らしい写真をありがとうございます。
    私も、尾瀬に出かけて野草に魅せられておりますが、なかなかヤチランに遭遇しません。7月の1~4日に散策の予定ですが、上手い手法がありましたらお教え願えれば幸甚です。又、今後ともよろしくお願いします。

    又、差支えがありませんでしたら貴兄のフルネームを教えて頂けないでしょうか。

  • #2

    HiroKen (木曜日, 30 6月 2016 21:54)

    いつもご訪問いただき、ありがとうございます。
    ヤチラン、見てみたいですね〜。ホザキイチヨウランとどう違うのか?をじっくり観察してみたいです。 尾瀬は素晴らしい場所ですが、残念ながらまったく詳しくないので、どこにいそうなのか見当もつきません。

    フルネームは、事情がありましてホームページ上では、公開しておりません。

  • #3

    ゆき (木曜日, 03 8月 2017 19:33)

    こんばんは、hiroさん、Kenさん、ホソバノキソチドリ、写真ありがとうございます、咲き始めの清々しい、綺麗な色と姿ですね、コバノトンボ草との比較も、とても、分かりやすい解説、勉強になります。

  • #4

    Ken (金曜日, 04 8月 2017 05:51)

    ゆきさん、いつもありがとうございます。ツレサギソウ属の花は緑色をしたものが多く、一見するとどれも似ているので区別しにくいです。でも細かく見ていくとそれぞれ特徴があり、個性豊かな花たちであることがわかりました。

 

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