テガタチドリ、ノビネチドリ、ハクサンチドリを並べて比較!

 

 何年か前、野山の花に興味を持ち始めたころ、なかなか識別できなかった「チドリ」が名につく3種のラン。 同じように悩んでいる(?)方のお役に立てばと思い、同定し易いように写真を並べてみました。

 写真はクリックすると、少し大きく表示されます。 詳細については、それぞれの花の専用ページをご覧ください。

 

 下の写真は3種の全体像を比較するものです。 写真のスケールが違うので大きさの比較はできません。 どの花も茎の中ほどより下に数枚の葉をつけ、まっすぐ上に伸びた茎の先には、たくさんの花を穂状につけます。 確かにちょっと似ていますね。


 この大きさの写真での識別方法ですが、茎の高さなどは栄養状態や環境に左右されるので参考になりません。 ここでは葉に注目しましょう。 写真の下にそれぞれの葉の特徴を列挙しました。 なお、3種とも葉は互生し、基部は茎を抱きます。


テガタチドリ、ノビネチドリ、ハクサンチドリ

 テガタチドリの葉

 ・細長く(広線形)、

  大きくない。

 ・縦に二つ折りのように

  なる。

 ・縁は縮れない。

 ノビネチドリの葉

 ・丸っこい感じ(楕円形)

  で大きく、目立つ。

 ・縦じわがある。

 ・縁が波状に縮れる。

 ハクサンチドリの葉

 ・平たく細長い印象

  (倒披針形)。

 ・下部の葉は幅が広い。

 ・縁は縮れない。


 

次は花の形状を見比べてみましょう。

(スケールが違うので、大きさの比較はできません)

 

テガタチドリ

Gymnadenia conopsea

・萼片や花弁が丸っこい。

・目立った模様はない。

・唇弁は3裂し、中・側裂片は

 同じ長さで円頭。

・距は長く、後方にほぼまっす

 ぐ伸びる。入り口は小さい。

ノビネチドリ

Gymnadenia camtschatica

・萼片や花弁がテガタチドリ

 よりは角張った感じ。

・唇弁は白色に2本の紅紫色

 の縦線が入る。

・唇弁は3裂し、中裂片は円

 頭、側裂片は中裂片より長く

 やや鋭頭。

・距は短く、強く湾曲し先端は

 前を向く。入り口は小さい。

ハクサンチドリ

Orchis aristata

・萼片や花弁の先端が尖る。

・唇弁に濃紅紫色の斑紋があ

 る。

・唇弁は3裂し、中裂片の先端

 は鋭く尖る。側裂片は大きく

 楕円形で、縁が浅く不規則に

 切れ込む。

・距は大きく、円錐形で後方に

 伸びる。入り口は大きい。


 

 並べて比べると、ずいぶんと違った植物であるとわかります。 それぞれの特徴を知れば、もう同定で悩むことはないですね。

 

 チドリと名につくランは、他にもたくさんあります。 アオチドリ、ガッサンチドリ、キソチドリコアニチドリニョホウチドリミズチドリ... まだまだたくさん。 

 

 ツレサギソウ属のランは今だに識別に悩むことがあるので、次の機会にはツレサギソウ属のいくつかのランを比較してみたいと思います。

 

 

2012.12.06 掲載

 

 

コメント: 9 (ディスカッションは終了しました。)
  • #1

    小梨 (火曜日, 29 7月 2014 22:22)

    3者の違いがよく分かりました。 ありがとうございました。

  • #2

    hanasanpo (火曜日, 29 7月 2014 22:49)

    小梨さん、コメントをありがとうございます!
    この3種は何度図鑑で調べても、フィールドで見るとわからなくなってしまうので、このページを作りました。
    また遊びに来てくださいね〜

  • #3

    土佐市のぽち (水曜日, 05 7月 2017 20:53)

    いつも拝見さして頂き、とても助かっています。先日瓶ヶ森で初めてノビネチドリを見て、大感激でした^^。ある所では、係員さんに聞いても教えてくれなかったので、それほど危惧されているのかと思って、諦めていました。春から夏の山野草に移り変わる中間に、爽やかな薄紫色の花を咲かせて、とても心に残りました。

  • #4

    Ken (水曜日, 05 7月 2017 22:24)

    いつもご訪問いただき、ありがとうございます。
    思わぬ場所で見たかった花に出逢えると、大感激ですよね! その感激がこれからも何度も訪れるよう、願っております。

  • #5

    NONO (木曜日, 17 8月 2017 11:56)

    北アルプス赤牛岳~水晶岳間に群れ咲いていました。
    ノビネとハクサンで迷って、ハクサンかと。
    また迷うたびに、寄らせていただきます。ありがとうございました。

  • #6

    Ken (金曜日, 18 8月 2017 03:33)

    コメントをありがとうございます。少しでもお役に立てて幸いです。

  • #7

    masa (木曜日, 26 7月 2018 01:53)

    とても分かりやすいです。
    白山ではニョホウチドリなるものも記述されています。上3種との違い、関係はどうでしょうか?

  • #8

    Ken (木曜日, 26 7月 2018 08:17)

    ありがとうございます。写真は少ないですがニョホウチドリのページもありますので、覗いてみて下さい。上にリンクを貼っておきました。

  • #9

    masa (金曜日, 27 7月 2018 02:29)

    有難うございます。コメントをお送りした後で気がつきました。
    色々拝見させて頂きます。