コアニチドリ

 

小阿仁千鳥 ラン科 ヒナラン属

Amitostigma kinoshitae (Makino) Schltr.

絶滅危惧Ⅱ類 (Vulnerble) 

コアニチドリ  2014.06.15 新潟県 alt=340m
 コアニチドリ  2014.06.15 新潟県 alt=340m

 

 多雪地の湿原や湿った岩場に生える、高さ10〜20cmのランです。

北海道と本州の中部地方以北に分布します。 花期は6〜8月。 和名

は発見地の秋田県小阿仁の小阿仁川に因みます。

 

 初めてのヒナラン属です。 思っていたよりずっと小さい! 繊

細で本当にかわいい花でした。 ほとんど垂直に近い岩壁に着生し

ていました。 今回は情報を提供いただいた花友さんのアドバイス

に従い、脚立を持参しました。 岩壁は絶えず湧き水が滴り落ちて

おり、その飛沫を浴びながらの観察となりました。

 

コアニチドリ


 脚立を開いてハシゴ状にして岩壁に立てかけました。 おかげで

花に近づくことはできたのですが、ハシゴの上は不安定ですし、カ

メラに水しぶきがかからないように注意も必要で、なかなか思うよ

うに撮影できません。 でもやっと出会えた花なので、楽しい撮影

でした。


コアニチドリ

 

 図鑑には「茎の中央部より少し下に1〜2個の葉をつける」

とありました。 確かに、上のように大きめの個体ではその

通りでしたが、小さめの個体では、茎の根元付近に葉をつけ

ていました。 葉は広線形で長さ4〜8cm、幅4〜8mm。

先端はとがり、基部は茎を抱きます。 葉は全体に内側に巻

き込むようになっていました。 これは雨水を根元に集める

ためかな?

 

コアニチドリ

 

 小さめ(高さ10cm程度)の個体では、葉は茎の根元付近に

つけていました。 花は2〜5個つけるようです。 ここでは、

2〜3個つけた株が多く見られました。

 

 コアニチドリ
 コアニチドリ

 

 花後には茎頂にむかごをつくり、落花すると発芽して独立した株

となります。 上の写真の茎頂にある丸く白っぽいものが、形成中

のむかごであると思います。 それにしても、かわいい花ですねえ!

 

コアニチドリの花の側面
 コアニチドリの花の側面

 

 コアニチドリの苞は広披針形で、長さ3〜8mm。  距は白色で、

長さ1〜1.5mmと短いです。 花柄子房のねじれは明確に確認で

きませんでした。 このため花柄子房のねじれと唇弁の位置で決

まる、当サイト固有のタイプ判別は保留とします。

 

コアニチドリ 花の正面と各部の名称
 花の正面と各部の名称

 

 花全体の色はごく薄いピンク色〜白色。 背萼片は楕円形で、

長さ3.5〜4.5mm。 側萼片は斜卵形で背萼片と同じ長さです。

側花弁は広卵形で、蕊柱を左右から包み込むようになっており、

長さは背萼片よりやや短い。 側花弁は花被片の中では一番色

が濃く見えました。

 

 唇弁は長さ7〜8mmで、深く3裂しし、中裂片の先端が少し

へこんでいます。 唇弁の基部には、赤紫色の斑が2列に並び、

アクセントになっています。

 

コアニチドリ

 

 蕊柱は短く、葯は丸っこい形で、紅紫色です。 この花は左側

の葯帽が破れて花粉塊が見えています。 花粉塊は、この花では

灰色がかった薄茶色に見えました。 蕊柱の根元には距への入口

が見えます。

 

 PCはマウスオーバー、スマホはタップすると拡大写真に切り替わります。


 根は、狭長楕円形に肥厚したものと、綿毛状のひげ根2〜3

本があります。 岩に着生しているのでよく見えました。


 

 上の写真を見ると、改めて「小さいなあ!」と思われるのでは?

スケールの長辺は10cmなので、この株の高さは11cmくらいと思

います。

 

コアニチドリ

 

 ハシゴを使ってもとても届かない、

岩壁の上の方にも咲いていましたよ。

 

 

自生地の情報を提供下さった、北信州のHさんに感謝いたします。

 

 

2014.11.15 掲載

チドリ3種比較

テガタチドリ、ノビネチドリ、ハクサンチドリの3種を比較!