テガタチドリ

 

手形千鳥 ラン科 テガタチドリ属

Gymnadenia conopsea (L.) R.Br.

テガタチドリ  2012.07.17 長野県 alt=2065m
 テガタチドリ  2012.07.17 長野県 alt=2065m

 

テガタチドリはよい状態のものに出会えていなかったのですが、今年

(2012年)、ちょうど見頃の状態の花を楽しむことができました。

 

テガタチドリ 2012.07.17 長野県 alt=2070m
 2012.07.17 長野県 alt=2070m

 

標高2千メートルを超える草原に咲いていました。

 

 2012.07.17 長野県 alt=2070m
 2012.07.17 長野県 alt=2070m

 

 花序は下から上に開花していきます。 咲き始め〜中盤は紡錘

形をしています。 苞は披針形で花とほぼ同じ長さ、中ほどで湾

曲しながら真上を向きます。上の写真では花が開花していない花

序の上部でツンツン立って目立っています。

 

 距は細長く後ろに伸びます。 図鑑には「やや反曲する(上に

反り返る)」とあり、そのような部分もありましたが、やや垂れ

下がり気味になる距が多く見られました。

 

 やや密につく花、長い距、そしてツンツンしている苞があるの

で、全体が賑やかな印象になるのだと思います。

 

 テガタチドリ

 

花が終盤になり茎頂部が開花する頃には、下部の

花は枯れ始め、花序の印象が少し変わります。

 

テガタチドリ  2012.07.17 長野県  後方の花はアヤメ
 2012.07.17 長野県  後方の花はアヤメ

 

根が掌状なのでこの名がついたそうです。 茎はやや太く、高さ

30〜60cm。 7〜8月頃、淡紅紫色の花をやや密につけます。

 

 2010.08.03 富山県 立山 alt=2420m
 2010.08.03 富山県 立山 alt=2420m

 

更に標高が高い草原でも見ることができました。

 

テガタチドリ 2012.07.17 長野県
 2012.07.17 長野県

 

 花は美しい淡紅紫色。 背萼片は卵形で長さ4〜5mm。 側花弁は斜卵形で背萼片より短く、立ち上がって蕊柱を囲むようになります。 側花弁はやや倒卵形の楕円形で、左右に開き、わずかに下垂します。

 

 唇弁は卵状くさび形で長さ6〜8mm、先端で3裂します。 中裂片と側裂片の大きさは同じで、どちらも円頭で可愛らしい印象を受けました。 中裂片には、ごく薄く白っぽい縦線が2本走ります。 距は線形で長さ15〜20mmと長く、花の後方に伸びます。

 

 以上のように、萼片と花弁は全体的に丸みを帯びた印象で、細長く鋭い感じの苞・距と絶妙なコントラストを成していると思いました。

 

テガタチドリ 上部の新しい花の距は反り上がり気味になる(矢印部が距)
 上部の新しい花の距は反り上がり気味になる(矢印部が距)
 テガタチドリの花柄子房は180°ねじれる
 テガタチドリの花柄子房は180°ねじれる

 

テガタチドリの花柄子房(→部)は、180°ねじれて、唇弁が花の

下側になります。 テガタチドリは「標準タイプ」のランです。

 

 テガタチドリの葉
 テガタチドリの葉
 テガタチドリの葉
 テガタチドリの葉

 

 テガタチドリには、ノビネチドリとハクサンチドリという少し似た花がいます。 特にノビネチドリとは葉の形状が大きく違うので、重要な識別ポイントになります。 残念ながら葉がきれいに写った写真がありませんでしたが、その中でマシなものを2枚、上に並べました。

 

 葉は茎の中部以下に4〜6個が互生し、広線形です。 長さは10〜20cmで、幅は1.0〜2.5cmで、ノビネチドリと比べると小型です。 葉の縁は、ノビネチドリのように波打ちません。 葉の中央部が凹んで縦に二つ折りのようになるのも特徴です。 基部は茎を抱きます。 

 

テガタチドリ 2008.07.20 群馬県吾妻郡 野反湖
 2008.07.20 群馬県吾妻郡 野反湖

 

 上は2008年に初めて見ることができたテガタチドリです。 見頃の時期は過ぎてしまっています。 野反湖を知り尽くす友人のNさんもテガタチドリは見たことがないということでしたが、ある文献でテガタチドリを見たという記述を見つけました。 以後、気をつけていたのですが、見つけることはできなかったのです。

 

 この日は昔いた会社の上司、先輩、後輩の3方と共に野反湖を案内していたのですが、先輩が、「コレ、何?」と指さした先にいたのがこの株だったのです。 やはり野反湖にもテガタチドリはいたのでした。 それがわかったのは嬉しかったのですが、花にお詳しいとは言えない先輩に先に見つけられてしまい、ちょっと複雑な気分を味わったのでした。

 

 

2012.12.01 掲載

 

チドリ3種比較

テガタチドリ、ノビネチドリ、ハクサンチドリの3種を比較!

 

ノビネチドリ
ノビネチドリ
ミヤマモジズリ
ミヤマモジズリ