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ニリンソウ

4. なぜ図鑑は解説しない?

 

 以下に4組の写真を掲載しました。 右の写真(−b)は、左の写真(−a)の一部を拡大したものです。 すべての写真に、赤い矢印で示された部分があります。 これらは何であると思われますが?

 

#21−a ニリンソウの苞
#21−a
#21−b ニリンソウの苞
#21−b

#22−a ニリンソウの苞
#22−a
 #22−b ニリンソウの苞
#22−b

#23−a ニリンソウの苞
#23−a
#23−b ニリンソウの苞
#23−b

#24−a ニリンソウの苞
#24−a
#24−b ニリンソウの苞
#24−b

 

 赤い矢印で示した部分は、いったい何でしょう? 萼の下、花柄の基部に1対または数個あって、披針形で長さ10mmにも満たない、緑色の葉のようにも見える器官・・

これは「苞(苞葉)に違いない!」と思いました。

 

 さっそく図鑑や文献(*1〜*6,*12)を調べましたが、この器官について「一言も」述べられていないのです。 さらに所有する図鑑類を片っ端から引っ張り出し、入門者用のポケット図鑑から花のガイド本に至るまでしらみ潰しに調べましたが、この器官について触れた解説は皆無でした。 詳細な絵がある図鑑では、ちゃんとこの器官も描かれているのに、解説はない。

 

 小さな器官ですが、明らかに花の他の部分とは異なるものです。 詳細な解説がある大判の図鑑も含めて、一切語られていないとは、どういうことなのでしょうか?

これは何かの陰謀か?!

 

 そんな陰謀があるワケないので、気を取り直して今度はネットで検索しまくります。 筆者が気付いたのだから、きっと他にも気付いた方がいるハズです・・ かなりの数のホームページやブログを見ていたら、ありました! 「3枚の輪生する苞葉の上に、2枚の細長い葉が見えますが、これはいったい何なのでしょうか」と気づかれている方がいらっしゃいました!(*13) 筆者以外にも疑問に思っている方がいたとわかり、ちょっと一安心。

 

 さらに調べ続けるとこの器官について詳細に述べられているページを発見(*8)

>>こちら。 この器官は、やはり苞で間違いないようです。 このブログの筆者の方はかなり植物にお詳しいのでしょう。 感謝いたします。

 

 やっとスッキリできましたが、図鑑がなぜ苞について解説してくれないのか、その理由は想像するしかありません。 スペースの制約が厳しいハンディ図鑑なら理解できますが、詳細な解説が売り物の大判の図鑑で解説されていないのは不思議です。 解説するにも値しない部位だと判断されたのでしょうか・・?? もしそうなら、ちょっとニリンソウが気の毒です。 そんな気持ちもあって、写真を4組8枚も使ってご紹介しました。

 

 図鑑には解説がない小さな苞(葉)の存在を発見したことが、このページを作成した最大の収穫でした。

 

 

■ 送粉者...?

 

#25 ニリンソウの花を訪れたルリマルノミハムシ
#25 ニリンソウの花を訪れたルリマルノミハムシ

 

 ニリンソウの送粉者は、コハナバチ属やヒメハナバチ属などの小型のハナバチ類(*5)や、ハナアブ類、ハエ類(*6)が報告されています。 残念ながらこれらの昆虫が訪花したところをとらえた写真は撮影できていません。

 

 #25はニリンソウの花に訪れた、ルリマルノミハムシと思われる昆虫です。 ニリンソウの花に蜜はないので、花弁か花粉を食べに来たのかも知れません。 このハムシが送粉者となり得るのか不明ですが、よく見ると背中に花粉のような粉状のものがついています。 もし他の花にいって花の上を歩き回ったら、受粉して送粉者としての役割を果たすかも知れませんね。

 

 
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< 参考・引用させていただいた文献・図鑑や外部サイト(順不同・敬称略) >

 文献・図鑑などの著作物や、個人・法人のWEBサイトには著作権があることをご理解の上、ご利用下さい。

 

*1 牧野 新日本植物圖鑑  北隆館 1961年6月30日初版発行 p.178

*2 日本の野生植物 草本2 離弁花類  平凡社 1982年3月31日 初版第3刷 p.67,69

*3 山渓ハンディ図鑑1 野に咲く花  山と渓谷社 2013年3月30日 初版第1刷 p.235

*4 山渓ハンディ図鑑2 山に咲く花  山と渓谷社 2013年3月30日 初版第1刷 p.237

*5 林床景観要素としてのニリンソウの生活史特性 1992年 北海道立林業試験場 佐藤創

   こちらから閲覧可能

   J-Stage  日本林学会北海道支部論文集 40 巻 (1992) / 書誌

*6 東京農業大学厚木キャンパス(神奈川県)における早春植物ニリンソウ(Anemone

   flaccida Fr. Schm.)の季節消長とその生育環境 2009年 宮本太 桑原美代子

   こちらから閲覧可能

   AgriKnowledge  掲載ページ

*7 YList 植物和名ー学名インデックス  ニリンソウ

*8 仙台方面いなか丘陵周辺ぷち植物誌  ニリンソウ

*9 Wikipedia  ニリンソウ

*10 厚生労働省  有毒植物に要注意

*11 食品衛生の窓  トリカブト類(キンポウゲ科)

*12 山渓カラー名鑑 日本の野草  山と渓谷社 1986年11月1日 第12刷 p.480

*13 しろうと自然科学者の自然観察日記  2016.04.18 ニリンソウの群落で花が・・

 

※ 外部サイトは、それぞれの運営者の都合により、変更・削除されることがあります。

  最終閲覧:2020.05.20

 

2018.04.28 掲載

2018.05.13 1ページ構成から4ページ構成に変更

 

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ニリンソウに近い仲間たち(キンポウゲ科 イチリンソウ属)

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 花さんぽ

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コメント: 4 (ディスカッションは終了しました。)
  • #1

    三上 忠仁 (火曜日, 13 4月 2021 09:56)

    4. なぜ図鑑は解説しない?
    素晴らしい解説ありがとうございます。赤の矢印についてですが、小苞ではないでしょうか?花序の元につくのが苞葉で、小花につくのが小苞です。ただ、苞葉と小花の間に花軸がないのでもしかしたら苞葉の変化したものかもしれませんね。
    クリスマスローズを見てみましたら、苞葉から分かれた花柄があり、それに2枚の小葉がついて、小花がついていました。
    振り返って、ニリンソウを見てみますと、苞葉があって、花柄がなくて1~2枚の小葉がついているように見えます。2~3小花に各1~2枚ついているように見えました。
    いかがでしょう?

  • #2

    Ken (水曜日, 14 4月 2021 23:19)

    三上さん、当サイトへご訪問下さいまして、またこのページを読んで下さいましてありがとうございました。ニリンソウのページは幸いにしてとても多くの方に見ていただいておりますが、多くは1ページ目のみでやめられてしまいます。ページを追うごとに訪問者は少なくなり、4ページ目は1ページ目の1/10以下の訪問者しかおりません。きっとみなさん途中で疲れてしまうのでしょう。
    そんな中、4ページ目まで見ていただき、コメントまでありがとうございました。
    確かに小苞である可能性もありますね。ご指摘をありがとうございます。もしかすると、いろいろな見解があるので、図鑑は解説しないのかも知れないと思いました。今後もよろしくお願いいたします。

  • #3

    みくねこ (水曜日, 28 4月 2021 08:59)

    たくさんの説明にこの花がもっと愛しくなりました。ウチの庭は明るい場所のニリンソウは花盛りです。1~4リンソウです。4リンはめずらしいです。写真の送り方がわからず(アナログあばさんなので)残念です。

  • #4

    Ken (水曜日, 28 4月 2021 19:52)

    みくねこさん、ご訪問下さいまして、ありがとうございます。少しでもお役に立てて幸いです。4輪花を咲かせるニリンソウは珍しいですね!