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. 6月5日(土) シナノコアツモリソウ追っかけ隊 完結編

 

先月からシナノコアツモリソウを追っかけて・・

色白さんは、彩色変異体だとわかり、

コアツモリソウの白花としてご紹介しました。

このタイプを見ることができたことも、

情報を伝えて下さった方のお陰であります。

ありがとうございました。

 

その白花については、末次先生にもお尋ねして、

わかりやすい解説と優しい励ましのお言葉を頂きまして、

大変ありがたく思っております。

 

そんな経緯の中・・

本家本元のシナノコアツモリソウが是非とも見たくなり、

ぜひ見比べたいという願望が溢れ出しましたあ~

 

知人の方にダメ元で、お尋ねしてみたら・・

快く教えてくださいました。

本当に飛び上がるほど嬉しくて!

ご自身で撮影したお写真も送って下さり、

シナノコアツモリソウで間違いないと確信しました。

喜び勇んで、シナノコアツモリソウに逢いに行くことを決断!!!

 

現地に着くと・・

ちょっこりと咲いていました☆

これがシナノコアツモリソウです。

 

シナノコアツモリソウ (信濃小敦盛草) ラン科 アツモリソウ属  2017年に発表された新しい品種
シナノコアツモリソウ (信濃小敦盛草) ラン科 アツモリソウ属  2017年に発表された新しい品種
シナノコアツモリソウの花はほぼ真下を向いてしまっていますが、撮影のため少しだけ協力してもらいました
花はほぼ真下を向いてしまっていますが、撮影のため少しだけ協力してもらいました
普通種よりやや小型に見えました。 高さは5〜6cm
普通種よりやや小型に見えました。 高さは5〜6cm

 

白色で中央部に伊勢海老色(暗紫色)がほんわかと・・

大群生ではありませんが、小さな葉のものまで花を付けています。

 

シナノコアツモリソウ  一見して普通種のコアツモリソウと異なります
シナノコアツモリソウ  一見して普通種のコアツモリソウと異なります
シナノコアツモリソウは、唇弁に暗紫色の脈がありません
シナノコアツモリソウは、唇弁に暗紫色の脈がありません

 

袋状の唇弁に暗紫色の脈がないことが、目立つ特徴です。

(わずかに残る個体もありました)

側花弁内面の基部に暗紫色の班があるのは、普通種と同じ。

蕊柱(ずいちゅう)の基部には班がなく、普通種と異なります。

上の写真では背萼片の内面は見えませんが、次の写真で確認できます。

 

シナノコアツモリソウ この角度だと、背萼片内面の基部付近の暗紫色の班が見えます(矢印部)
この角度だと、背萼片内面の基部付近の暗紫色の班が見えます(矢印部)

 

全てこのタイプの色合いの株しかありません。

見慣れた伊勢海老色の縞模様のコアツモリソウは1株もありません。

事前に調べた資料の通り、普通種と混生することはないようです。

 

なんとなく、通常タイプよりも唇弁の下部が突き出ている気がする。

観察中ずっと「アゴが出てるー」と騒いでいました。

 

シナノコアツモリソウの唇弁下部は、コアツモリソウより突き出しているように見えた
シナノコアツモリソウの唇弁下部は、コアツモリソウより突き出しているように見えた

 

せっかくやってきたので、じっくりと撮影しなきゃ!

花は真下を向いているので、

添木や指で押さえるなどしないと正面が撮れません。

カメラを逆さまにしたり、地面に置いたり。

花を傷めてはいけないので、苦労しましたあ~

 

シナノコアツモリソウの花の側面 矢印は合萼片(側萼片2個が合着したもの)
シナノコアツモリソウの花の側面 矢印は合萼片(側萼片2個が合着したもの)
合萼片の内面は観察できませんでしたが、外面から班が透けて見えました
合萼片の内面は観察できませんでしたが、外面から班が透けて見えました
花粉塊が持ち去られている花がありました。 どうらや送粉者は訪れているようです
花粉塊が持ち去られている花がありました。 どうらや送粉者は訪れているようです

 

普通種のコアツモリソウの唇弁の暗紫色の脈の模様は、

キノコのエラを擬態したものだそうです。

またキノコと似た匂いも発していて、

菌類を食べるハエを引き寄せていると考えられているそうです。

 

唇弁の脈の模様がないシナノコアツモリソウは、

どのような昆虫をおびき寄せようとしているのだろう?

 

ハエの仲間?が訪れていた。 送粉者だろうか?
ハエの仲間?が訪れていた。 送粉者だろうか?
ハチは見なかったが、ハエの仲間に見える昆虫が多く訪れていた。 やはりハエが送粉者だろうか?
ハチは見なかったが、ハエの仲間に見える昆虫が多く訪れていた。 やはりハエが送粉者だろうか?

 

たっぷりとシナノコアツモリソウを堪能できました。

帰路で、この山域の管理を長年務めている方と、

お話しすることが出来ました。

やはり花の盗掘が多いことに悩まされているようです。

植林のことや、様々な経験を話してくれた86歳の元気な男性でした。

 

清々しい森と豊かな川の流れに癒されて、

シナノコアツモリソウをじっくり観察できました。

これにて「シナノコアツモリソウ追っかけ隊 完結」とします。

来た甲斐がありました。

今を逃すと来年になってしまうしね。

 

 

貴重な情報を教えて下さったT様には、

心より御礼申し上げます。

またどこかでご一緒出来たら嬉しいです。

 

 

2021.06.09 追記

シナノコアツモリソウを発表された末次健司先生に写真をお送りし、自生地の状況を報告させていただいたところ、『シナノコアツモリソウで間違いない』とのお墨付きをいただきました。 また唇弁先端部の形状が普通種と異なる点についても賛同いただき、『論文の写真でもそれが見て取れるでしょう』とのご回答をいただきました。

送粉者かも知れないと思われたハエについては、「大きすぎるので残念ながら花粉の運び手としては機能しないと思う」とのご見解でした。

末次先生、ご多忙のところ、ご見解をありがとうございました!