花さんぽ 2007-8                             ←前へ   下へ▼  次へ→

 

 4月30日(月)    東京都のイワウチワ

− 懺悔のレポート −

イワウチワ (岩団扇) イワウメ科 イワウチワ属  2007.04.30 東京都
イワウチワ (岩団扇) イワウメ科 イワウチワ属  2007.04.30 東京都

 

 都心から直線でおよそ50km、秩父多摩甲斐国立公園の一角に位置するお山に、イワウチワを見に行きました。 おそらく自宅から一番近いイワウチワの自生地だと思っています。 「少し時期が早いかな?」 標高は1000mと少し。 頂上から十数メートル下りた北西の急斜面に、立派な群生がありました。 時期もちょうど見頃でした!

 

 昨年(2006年)は風邪による発熱を押して、しかも単独で訪れましたが、今日はいつもの花さんぽのように、夫婦揃って見ることができました。 日差しは暖かく、誰もいません。 静けさの中で、熱く花観察に没頭していました。 そこに誰かが近付いて来ました...

 

 

 話は1時間ほど前に戻ります。 登山道で50歳代のご夫婦を追い越しました。 軽く挨拶を交わしました。 ご主人は、ハンディーキャップをお持ちでした。 両腕に、松葉杖を持っています。 両足の、膝から下を失っておられました。

 

 義足を着けてはいらっしゃいましたが、それはほとんどブラブラとぶら下がって、ようやく体を支えられるだけに見え、従って山を登るのは松葉杖を持った両腕だけなのです。 一歩、また一歩... やはりきつそうな表情をされていました。

 

 こんな根性のある男を目の前で見たのは初めてです。 この登山道には手を使わないと越えられない段差があります。 幅50cmしかない鎖場もあります。 初心者も行けますが、けっこうな汗をかく急坂が続きます。 この道をこの方は2本の松葉杖だけで登っていました。 奥さんは二歩ほど下がって見守るだけで、手を貸しません。 松葉杖だけで、両腕だけでこの道を行くのがどれほど困難なことか、容易に想像できました。 自分なら、100メートルも行けないうちにギブアップでしょう。 本当に驚きました。

 

自生地はこんな雰囲気。花の密度はあまり高くない
 自生地はこんな雰囲気。花の密度はあまり高くない

 

 途中道を間違えて40分もロスしましたが、お目当てのイワウチワに出会うことができました! 山頂から北斜面を15mほど降りた場所で、上下15m、左右30mほどの範囲に咲いています。 しばし撮影に没頭します。 急斜面で足場は崩れやすく、やや危険な場所です。 木立が多いので、ころんでも谷底までころがり落ちてしまうことはないでしょうが...。 汗だくの撮影。

 

 かすかに物音を聞いた気がしました。 先ほどの松葉杖の方だな、と頭の隅でチラッと思いましたが... 何もしませんでした。 と言うより内心、昨年見つけたこの場所が誰にも見つからなければよい、と思ったかも知れません。 心ない盗掘者が多いので、貴重な花の咲く場所は人に教えないに越したことはない、と思ったかも知れません。

 

 

 たっぷり楽しんで、さあ下山。 途中であのご夫婦が休憩していました。ご主人は登りの時とは変わって、爽やかな表情をされていました。 少しお話しをしました。 このご夫婦も、実は花が好きだったとわかりました。 奥さんは道すがら登山道脇の花の写真も撮られていたそうです。 頂上のすぐ裏にイワウチワの群生があったことを話したら、ご主人は「そうだったのですか。 見たかったなー」とおっしゃいました。

 

 ものすごい後悔の気持ちが湧いて来ました。 なぜあの時教えてあげなかったのか? 松葉杖だけで山に登るほど自然を愛している人なのに。 そんな人が盗掘なんてするワケがないのに。 「自分さえ満足すればいいんだね」もし誰かにそう言われても返す言葉がない気がしました。

 

 後悔先に立たず。 これから頂上に戻って見ましょう、とも言えません。頂上付近はちょっと険しいのです。 そこを松葉杖だけで登って来た人に、教えてあげなかった。 私は本当にひどいヤツでした。

 

 このご夫婦とは、きっとまたどこかで出会える気がします。その時は今回のイジワルをお詫びし、もっといろいろお話ししようと思います。 初対面で名前もわかりませんが、そんな気にさせるご夫婦でした。

 

後ろ姿もかわいい
 後ろ姿もかわいい

 

 

オリジナルレポート表紙
  オリジナルレポート表紙

 

2011.12.26 掲載

 

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