タンザワサカネラン

 

丹沢逆根蘭 ラン科 サカネラン属

Neottia inagakii  Yagame, Katsuy. et Yukawa

絶滅危惧1B類(Endangered)

#1 タンザワサカネラン 2017.06.24 東北地方(このページの写真すべて)
#1 タンザワサカネラン 2017.06.24 東北地方(このページの写真すべて)

 

 高さは5〜15cmで、全体が乳白色でやや褐色を帯びた、不思議な姿の植物でした。花序あたり花を10〜20個つけます(*1)。 花は開花前のつぼみの状態に見えますが、実はこれで最盛期か、ややピークを過ぎた状態なのです。 花はほとんど開きません。

 

 日本固有種です。 2002年に神奈川県の丹沢山系で発見され、2008年に新種として記載された、とても新しい種です(*1,*2,*3)。 このため古い図鑑には載っていません。 現在までのところ、宮城・福島・茨城・神奈川の4県8ヶ所で発見されています。 このうち4ヶ所では生育が確認されていないそうです(2013年時点、*3)。

原因は、消滅しやすい植物であること、地上に花茎を出す個体がまれであること、そしてその両方であることが、考えられるそうです(*3)

 

 個体数も極めて少なく、環境省が絶滅危惧種ⅠB類に指定しています(ⅠA類ほどではないが近い将来における絶滅の危険性が高い種)。 1年のうち、開花・結実期にあたる梅雨時の3週間ほどしか地上に出現しないことも、観察例が極めて少ない原因と思われます。 また新種であることから認知度が低く、もし見つかってもヒメノヤガラやサカネランなどの他の菌従属栄養植物と誤認されてしまっている可能性もあります。 逆に言えば、認知度が上がれば、今後各地で発見される可能性があります。

 

#2 タンザワサカネランの茎の下部に鞘状で膜質の葉がある
#2 茎の下部に鞘状で膜質の葉がある

 

 自生環境は、冷温帯〜温暖帯のモミ林、落葉広葉樹林、常緑広葉樹林の林床です(*1)。 本種は、生きるために必要な栄養を、光合成ではなく共生する菌に依存する、菌従属栄養植物です。 菌根菌は担子菌門のロウタケ科、イボタケ科、ベニタケ科などです(*1)。 菌根菌から必要なすべての栄養源を得るので、光合成に必要な葉は不要となってありません(下部鞘状の葉は残る)。 また葉緑素もないので、全体が乳白色をしています。 茎下部に数個の鞘状で膜質の葉があります(矢印部)。

 

 菌従属栄養植物に葉がないことについて「葉は退化してない」といった説明を見かけることがあります。 しかし「退化」ではなく、部分的菌従属栄養から菌従属栄養へ「進化」した結果、葉をなくしたと表現するのが妥当かなと思います。

 

#3 タンザワサカネラン
#3 タンザワサカネラン

 

 目立たない姿なので、もしハイキングコースの脇などに生えていても、気付かずに通り過ぎてしまう可能性が高いな、と感じました。 誰かに「ほら、ここに咲いているよ。 ココ!」と指差して教えてもらわないと、存在に気付かない可能性が高い植物だと思いました。 しかしハルザキヤツシロランのように枯葉と同化してしまっているような暗い色ではないので、一度見て目が慣れれば、見つけられる可能性は高まりそうです。

 

#4 タンザワサカネランの花序の様子
#4 タンザワサカネランの花序の様子

 

 子房には微毛が生えていました。 花は径4〜5mmほどと小さく、ほとんど開かず、子房の先に萼片が丸くなり側花弁と唇弁を包むようになっています。

 

 開かない花も含めてほぼすべての花が結実するので、自動自家受粉すると思われています(*1)。 今回観察した中ではいくつかの花はわずか(1〜2mmほど)に開いていたので、他家受粉も捨てきっていないのでしょう。 #4の中央の花は、わずかに開いてます。 #5は拡大したものです。

 

#5 タンザワサカネランの花はわずかに開くこともある
#5 花はわずかに開くこともある

 

 わずかに開いた花の中に、蕊柱らしきものが見えました。 淡黄色の部分は、花粉塊でしょうか? 唇弁が明確に示せる写真は撮影できませんでした。 背萼片と2個の側萼片は、合着しているようにも見えました。

 

#6 タンザワサカネランの花
#6 タンザワサカネランの花

 

 花の内部を見せてくれないので、詳しい構造はわかりませんでした。 研究者の方が鋭意研究中なので、この植物についてもっと多くのことが明らかにされる日も遠くないと期待します。 ここでいつまでも生き続けてくれることを祈って、自生地を後にしました。

 

 希少な植物の自生地を案内して下さったYさんには、改めて感謝申し上げます。

ありがとうございました。

 

 非常に数が少ない植物ですので、もしどこかで見かけたら、下のメールフォームからご一報いただけると嬉しいです。 秘密は厳守します。 目的は自分が見たいからではなく、研究者の方の一助になるからです。 研究対象になったとしても、自生地を荒らすことはありませんので、ご安心下さい。

 

 

< 引用・参考文献、及び外部サイト(順不同、敬称略) >

 

*1 日本のラン ハンドブック ①低地・低山編

   文一総合出版 2015年5月1日 初版第1刷 p.65

*2 A New Species of Neottia (Orchidaceae) from the Tanzawa Mountains, Japan

   2008 谷亀高広、勝山輝男、遊川知久

*3 東北地方新産の タンザワサカネラン (ラン科)とその生育地および花の形態

   2013 山下由美、山下俊之、移川仁、小笠原宏晃、黒沢高秀

*4 菌従属栄養植物の系統と進化 2014 遊川知久

*5 花ママと花パパの 野の花・山の花 北海道  タンザワサカネラン

*6 植物和名−学名インデックス YList  タンザワサカネラン

 

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2018.05.18 掲載

 

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