アキザキヤツシロラン

 

秋咲八代蘭 ラン科 オニノヤガラ属

Gastrodia confusa Honda et Tuyama

アキザキヤツシロラン 2013.09.23 東京都 alt=165m
 アキザキヤツシロラン 2013.09.23 東京都 alt=165m

 

 愛嬌があるというか、ちょっとコワイというか... 変わった

ランに出会うことができました。 実はずっと見たかったラン

なのですが、自生地の情報が得られずにいたのです。 今回あ

る方から詳細な情報をいただくことができ、さっそく向かった

のでした。

 

 自生地は孟宗竹の竹林で、普段人が立ち入っているとは思え

ない場所でした。 かなり薄暗い。 至る所にジョロウグモが

大きな巣を張っています。 小さく目立たないはずなので、踏

みつけないよう、目の前の地面を注視しながらゆっくり進みま

す。 そして... 見つけました、アキザキヤツシロラン!

 

アキザキヤツシロラン 2013.09.23 東京都 alt=165m

 

 竹林のため、林床には白っぽくなった竹の枯れ葉が敷き詰め

られています。 その中にポツリポツリと黒いものが。 高さ

は2〜4cmほどしかなく、カメラを地面に置くようにして撮影。

やや時期が早く、ほとんどがまだ蕾の状態でした。 

 

 

 主に竹林の林床に生えます。 葉緑素を持たず、

光合成を行わない、菌従属栄養植物です。土壌中の

菌類から栄養分を得ています。 本州の千葉県以西、

四国、九州、南西諸島に分布し、花期は9〜10月です。

 

上の写真にポインターを重ねると各部の名称を図示します。スマホはタップして下さい。

 

 派手さとは無縁の、なかなか渋い姿のランです。 暗褐色にわ

ずかに緑色が入っている部分があります。 明るい色の華やかな

ランも好きですが、このように渋さが際立つランも見応えがあり

ます。 

 

 萼片と花弁は基部で合着し、筒状になっています。 少し似て

いるクロヤツシロランは萼片と花弁が平開近くまで開きますが、

本種はほとんど開きません。 とはいっても上の花は開花して間

もないようなので、この後もう少し開くのだろうと推測します。

 

 唇弁は白黄色で、毛はありません。 唇弁の毛の有無は、クロ

ヤツシロランとの最大の識別ポイントです。

 

アキザキヤツシロラン

 

 萼片の外側には、やや白っぽい小突起が多数あります。

「イボイボがたくさんある」と表現したくなります。

子房には暗褐色の縦線があり、萼片よりさらに小さい微

小突起が見えます。

 

 ラン科の植物は子房と花柄の境界が不明瞭なことが多

く、その場合、合わせて「花柄子房」と呼んでいますが、

本種は明確に区別できます。  また子房にも花柄にも

「ねじれ」はなく、本種は「ストレート・唇弁下側タイ

」のランです。

 

 読者の方より落下した花の花柄にねじれがあったとコメントを

いただきました。その方のFacebookにある写真を拝見すると、

明確にねじれがあります。 落下していない花の花柄には

ねじれはなかったとのことです。 このことから、アキザキ

ヤツシロランの花柄は、ねじれない場合とねじれる場合があると

推測できます。 他のオニノヤガラ属のランも含め、今後更に

観察が必要とわかりました。 (2019.10.20 追記)

  

アキザキヤツシロラン

 

 和名は花の咲く時期と、発見地の熊本県の八代に

由来します。 環境省RDBには記載がありませんが、

東京都のRDBでは絶滅危惧ll類とされています。

 

 花後の果実期には高さ30cmくらいにまで伸びる

そうです。 そうなれば見つけやすいでしょうね。

機会があればその姿も見てみたいものです。

 

 貴重な情報をご提供下さったAさんに多謝。

 

2013.10.30 掲載

 

 

よく似た植物

クロヤツシロラン

 

アキザキヤツシロランが掲載されたページ

 Dairy-Hiroダス

  2019年9月15日 やっとのご対面

  2013年9月23日 竹藪に咲く

 

他のオニノヤガラ属の植物

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クロヤツシロラン
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ナヨテンマ
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コメント: 5 (ディスカッションは終了しました。)
  • #1

    peko (水曜日, 30 10月 2013 09:19)


    秋晴れの天気となりました。
    何処かへ飛び出したい気持ちです。^^;

     これまた貴重なランですね。竹林の中というのが、これまた不思議です。
    都会の身近な所で、見れるということは、まだ自然が残っている証拠でしょうか。うれしいことです。

  • #2

    hanasanpo (水曜日, 30 10月 2013 20:51)

    pekoさん、こんばんは~

    秋らしい、爽やかな晴天の日も多くなってきましたね。

    このランは、ライバルが少ないので竹林を選んだのでは?とも思いました。竹林は暗いせいか、竹以外の植物はほとんどいなく、いても小さいものでした。腐生ランは光を必要としないので、共生菌がいれば竹林の中が快適なのかも知れませんね。

  • #3

    宇治のヒカルゲンジ (土曜日, 19 10月 2019 20:34)

    最近私もアキザキヤツシロランを見る機会がありました。落下した花もあり写真を撮りましたが、花柄の基部近くが180度ねじれていました。確かに花茎についているのはねじれが確認できませんが。同じ種でもねじれたり捻じれなかったりするのでしょうか?花本体は全て唇弁下側タイプでした。

  • #4

    HiroKenのKen (土曜日, 19 10月 2019 23:17)

    宇治のヒカルゲンジさん、大変貴重な情報をありがとうございます! これは非常に興味深いです。 Facebook拝見しました。 落下した花の花柄は完全にねじていますね。 落下した後にねじれたとは考えにくいので、落下する前からねじれていたものと思われます。 上の記事では「ストレート・唇弁下側タイプ」と断定していますが、この後訂正します。 同じ種でもねじれたりねじれなかったりすることはあるかも知れません。 属は違いますが、サイハイランでそのような現象を確認しています。 同じ株の中で、ねじれの有無がありました。 よろしかったらサイハイランのページをご覧下さい。
     今まで多数の読者様から、多種多様なコメントをいただきましたが、花柄・花柄子房のねじれに関するご投稿は非常に稀です。 宇治のヒカルゲンジさんの観察眼に敬服いたします。 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

  • #5

    HiroKenのKen (土曜日, 19 10月 2019 23:49)

    宇治のヒカルゲンジさん、本文中でFacebookの記事にリンクを貼らせていただきました。