クマガイソウの奥の間 2

 

クマガイソウの画像や情報を追加していくページです。

最終更新日:2016年5月3日 

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クマガイソウ (熊谷草) ラン科 アツモリソウ属 2016.04.23 静岡県 alt=145m
クマガイソウ (熊谷草) ラン科 アツモリソウ属  2016.04.23 静岡県 alt=145m

 

 人に植えられたものではなく、自生であると確信できるクマガイソウを、ようやく見ることができました。

 

 その経緯は... 昨年(2015年)ある花が見たくて、Hiroが苦心していろいろ調査し、静岡県のとある山に狙いを定めて向かいました。 見事、その花を見ることができましたが、それを聞いた花友さんが、ご自分もぜひ見たいと。 いつもお世話になっている花友さんですから、もちろんお教えしました。

 

全国に何箇所かある、大規模なクマガイソウの群生地と比べたら数は少ないが... 不満はない!
全国に何箇所かある、大規模なクマガイソウの群生地と比べたら数は少ないが... 不満はない!

 

 数日後にその花友さんも無事花を観察されました。 その帰り道に、何気なく山の中のある、一軒のお店に立ち寄られたのです。 そうしたらお店の中にクマガイソウの写真が飾ってある。 店の主人に「これはどうしたのですか? 植えたもの?」と尋ねると、主人は「いえいえ、昔から裏山に生えていたんですよ。 私は子供の頃にそのことを祖父から聞いてはいたんですが、特に関心がなかった。 でも何年か前に花好きの友人にそのことを話したら、早速見に行って、これはとても貴重な花だよと教えられたんですよ。 それ以来、周りの下草を刈ってやるくらいしかしていませんが、だんだん数が増えて来たのです」

 

私たちにとっては「野山に自然に咲く花」と信じられることが大事。 人が植えた花には興味を持てない
私たちにとっては「野山に自然に咲く花」と信じられることが大事。 人が植えた花には興味を持てない

 

 「来年の花の時期に、見せてもらえますか?」花友さんが尋ねると、「ええ、いいですよ。ご案内しましょう」と応じてくれたそうです。 その話を聞き、私たちもぜひ見させていただきたい!と思いました。 今回いよいよ花友さんが見に行かれるので、私たちもご一緒させてもらいました。 そのときの様子はこちらのDairy-Hiroダスに書かれています。

 

下草刈り程度しかされていないクマガイソウの自生種は、力強さと美しさを併せ持つ
下草刈り程度しかされていない自生種は、力強さと美しさを併せ持つ

 

 2箇所で小さな群落を形成していました。 林縁のものは日当たりがよいせいか、もう見頃の時期を過ぎていました。 木漏れ日が入る杉林の中の群落は、まだまだ見頃な状態だったので、林内の群落を観察しました。

 

 人の関与がミニマムであるので、ほぼ野生の状態です。 保護され過ぎたものより、力強さを感じました。 美しさも一入です(個人の感想でございます)。

 

クマガイソウは一度見たら忘れられない、変わった顔を持つ花です。
一度見たら忘れられない、変わった顔を持つ花です。
クマガイソウの花の側面

 

 上は花の側面ですが、見ていただきたいのは、苞葉です。 花柄が傘の持ち手の部分のように曲がった部分から、真上に立つように生えているのが苞葉です。 当サイトの他の写真にも苞葉が写っているものがありますが、どれもあまり鮮明ではないので、この写真を掲載しました。 苞葉は、開花前の花を守るように包んでいます。 上の写真では扇子を半分開いたような形に見えますが、長楕円形で先は尖ります。 茎葉と同じく、明瞭な縦筋(葉脈)がありました。

 

 さて、花友さんが落ちてしまった花を見つけました。 落ちてまだあまり時間が経っていないようです。 私たちは日頃、被写体の植物にはなるべく触れないようにしています。 せいぜい、枯れ葉が乗っていたら取り除く程度。 しかし落ちてしまった花は、干からび、変わり果てた姿になるのを待つばかりです。 これは手に取り見させてもらっても罪はないでしょう。 クマガイソウの花を手にとってジックリ眺めることができるなんて、千載一遇のチャンス! 早速花を奪い取るようにいただき、詳しく観察してみました。 ドアップの写真でご紹介します。

 

唇弁正面の開口部は、マルハナバチのための入り口。 お客様、こちらがEntranceでございます。
唇弁正面の開口部は、マルハナバチのための入り口。 お客様、こちらがEntranceでございます。

 

 唇弁は後面から前面に向けて丸く巻き込み、正面で左右の唇弁んの縁を内側に巻き込むようにて接し、袋状となります。 左右の縁が接した下の方に、小さな開口部を作ります。

 

 クマガイソウの送粉者(花粉を運ぶ昆虫など)は、マルハナバチであることが確認されています。 大きな袋状の花に開いた開口部は、マルハナバチが入るのに調度良い大きさになっています。 マルハナバチにしてみれば、「おっ? この中に蜜があるに違いない!」と非常に興味をそそられるのではないでしょうか。

 

 マルハナバチはこの開口部から簡単に中に入ることができますが、ここから出て来ることはできません。 行きはヨイヨイ帰りはコワイ、です。 開口部の内側には「返し」があり、中からは外に出られない仕組みになっているのです。 それでは、マルハナバチはどうなってしまうのでしょうか?

 

クマガイソウの唇弁内の黄色の隆起線は、まるで案内表示の矢印だ!
クマガイソウの唇弁内の黄色の隆起線は、まるで案内表示の矢印だ!

 

 唇弁を少し開いて、中を覗いてみました。 内部は薄い唇弁を通した光が入り込み、なかなか幻想的な光景です。 人間の作った建造物にこれに類したものはないと思います。 もしマルハナバチほど小さくなれたら、入ってみたいと思いませんか?

 

 袋状の唇弁の底面から背面にかけて、黄色い縦の隆起線が3本、ありました。 黄色で目立つ上に、3本の隆起線は手前の間隔が広く、奥が狭くなっています。 これは、まるで道路に描かれた案内矢印と同じではないですか!  「ハイ、順路はこちらですよ〜」というサインに見えます。  しかもご丁寧にも、3本の隆起線に沿って毛が生えているのです。 マルハナバチはこの毛を足がかりにして、出口を求めて唇弁の背面を登っていくに違いないでしょう。

 

 それはともかくとして、この辺りに蜜があるのでしょうか? もしここに蜜がなかったら、私だったらきっとガッカリします。 あるいは、入って来た入り口から出られそうもないので、パニックになって蜜どころではなく、唇弁の袋の中をウロウロさまようかも知れません。 そうならないように、黄色い道標があるのでしょうが...。

 

クマガイソウの唇弁底部には、やはり、蜜らしきものが!
やはり、蜜らしきものが!

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 唇弁の奥を拡大してみました。 リングライトの光を反射して、わずかに光っている部分があります。 何らかの液体があるように見え、マルハナバチは「蜜がある!」と喜んで飛び込むかも知れません。 しかし、これは蜜ではありません。

 

 アツモリソウ属の花には蜜腺はなく、従って蜜を作って分泌することはないのです。 上の写真の液体に見えるものは、雨水などが付着しているだけなのでしょう。アツモリソウ属の植物は、花粉を運んでくれるマルハナバチになんの報酬も与えない、「無報酬花」なのです。 マルハナバチは、さぞかしがっかりしたことでしょう。 これを繰り返せば、この花に蜜はないことを学び、花を訪れることはなくなるかも知れません。 実際、他の植物と比較して、アツモリソウ属の植物への訪花頻度は、極端に低いそうです。

 

クマガイソウの唇弁の半透明点
唇弁の半透明点

 

 ここまでページを作っていて、ハタと気づいたことがありました。 唇弁には、まだら模様があります。 一部は膜質が薄いのか・色素が少ないのか・その両方なのか? わかりませんが、光が透過しやすくなっている部分があるのです。 左上の写真で、それらのいくつかを矢印で示しました。 以前よりコレナンダと思っていました。 植物の花の形状は、すべて必然であり、偶然はないと思っています。 「たまたまこうなった」のではなく、植物が意図を持って「こうした」のです。 花の各部のすべての形状に、その形にした理由があるはずです。

 

 この部分を何と呼ぶのが適切か不明ですが、ここでは思いついたままに「半透明点」と呼ぶことにします。 唇弁に半透明点があるのは、なぜなのか? ここで一つの仮説を立てました。 半透明点は、唇弁の下部より、上部に多く分布しているのではないか? その理由は、上部に多くの半透明点を配置することにより、唇弁内の上部を明るくするためです。

 

 光は、重要です。 昆虫は、暗い場所では、明るい場所に向かって移動しようとする性質があります。 これは唇弁上部の「出口」に早くマルハナバチを誘導しようという、クマガイソウの作戦ではないでしょうか? クマガイソウは、広告塔である大きな唇弁と、適切な大きさの開口部、そして蜜を使い、まんまとマルハナバチを唇弁内に誘い込みました。 しかしマルハナバチが唇弁の中でアグラをかいて、のんびり一服してもらっては困るのです。 とっととクマガイソウが目論む「仕事」をして、出て行ってほしいのです。

 

 だからマルハナバチに「順路」を示す黄色い矢印の隆起線を作り、足がかりとなる毛を生やし、更には出口方向を明るくして、「お早めのご退室」を促しているのではないでしょうか? きっとそうに違いない! この仮説をクマガイソウにおける「半透明点唇弁上部多分布仮説」と、勝手に命名します。 これはHiroKenの独自理論で、図鑑には載っておりませんゾ(当たり前か)。

 

クマガイソウの半透明点と近似色の部分の分布(反射光)
半透明点と近似色の部分の分布(反射光)

 

 半透明店の唇弁上の分布を調べるため、画像処理ソフトを使い、半透明点と近似色の部分を、別の目立つ色に置き換えてみたのが、上の写真です。 アレ〜? ほぼ均一に分布していますね。 上部に多く分布しているようには見えない。 せっかくの「半透明点唇弁上部多分布仮説」が、一瞬で撃沈か?

 

 いえいえ、これはやはり調査のアプローチの方法がおかしかった。 本来であれば唇弁の内面から透過光で調べなければならないハズです。 なのに外面から反射光で見てしまったので、正しい評価はできないのです。 これも今となっては後の祭。

 

 というワケで、仮説の証明はできませんでしたが、かと言って間違っていたということにはならんでしょうに(開き直り)。 クマガイソウには、この仮説を裏付けることになるかも知れない、もう一つの大きな特徴があるのですよ(切札登場)。 それは、合萼片(ごうがくへん)です。

 

 ラン科の植物の花は、必ず6個の花被片を持っています。 すなわち、外花被片である背萼片1個、側萼片2個、そして内花被片である側花弁2個、唇弁1個の計6個です。 ラン科は種により形状は実に多様性に富んでいますが、「花被片6個」は変わらないのです(オニノヤガラ属などは外花被片3個が合着し萼筒を形成しますが、先端の裂片で背萼片と側萼片の区別はできます)。 ところが、クマガイソウが属するラン科・アツモリソウ亜科の植物の花は、どう見ても花被片が5個しかないのです。 これはどうしたことでしょう?

 

 実は、元々6個であったのですが、2個の側萼片が合着し1個の萼片となっているのです。 これを合萼片と呼びます。 上の写真では、合萼片は唇弁の真後ろに垂れ下がるようになっています。 次の写真でより明確にわかります。

 

クマガイソウの合萼片(背萼片、側花弁、合萼片、唇弁、苞葉、花茎、茎葉)
クマガイソウの合萼片

 

 ではなぜ、2個の側萼片を合着させたのか? ここで先ほどの「半透明点唇弁上部多分布説」が再登場します。 もし他のラン科と同じように、側萼片が唇弁の両脇にあったら、唇弁が影になってしまうではあーりませんか! 唇弁を明るくしないと、せっかくの半透明点が活きない。 だから邪魔な2個の側萼片をくっつけて、唇弁の後方に配置してしまったのではないでしょうか?

 

 あたかも女性が自慢のボディラインを強調したいが故に、両腕を背中に回し腰の後ろで手をつなぐポーズを取るが如く。 まったく荒唐無稽な説とも言えないのではないでしょうか?

 

マルハナバチは、葯に背中をこすりつけないと脱出できない。 お客様、出口はこちらでございます
マルハナバチは、葯に背中をこすりつけないと脱出できない。 お客様、出口はこちらでございます

 

 大脱線してしまったので話を戻します。 唇弁奥の内面をえっちらおっちら登ってきたマルハナバチは、とうとう出口にたどり着きます。 閉じ込められてしまうかもと思っていたので、ちょっとほっとします。 しかしここでまた問題が。 出口は蕊柱(ずいちゅう)の両脇にあるのですが、やたらと狭いのです。 それでも脱出しないワケにはいかないので、ここにもたくさん生えている毛を足がかりにし、身をよじるようにして出口をくぐり抜けます。 出口の広さは、マルハナバチが頑張って、ようやく通り抜けられる大きさになっているのです。 そのとき、背中をしこたま葯にこすりつけ、半ば強制的に花粉を受け取らされることになります。

 

 ちょっとだけまた脱線しちゃいますが、白い矢印の部分は半透明点です。 やはり唇弁の上部の方が開口部が大きく、数も多いように見えるのですが。

 

クマガイソウの蕊柱付近を側面から見る(蕊柱、雄しべ、仮雄しべ、柱頭)
蕊柱付近を側面から見る

 

 蕊柱付近を真横から見ながら、もう一度確認します。 赤い円内の空間を、奥から手前に向けてマルハナバチが脱出してきます。 そのとき、葯に背中をこすりつけることになります。 葯は花粉(粘液質によってまとまった粘質性花粉塊)を蓄えているので、マルハナバチの背中にたっぷりと花粉が付着することになります。 このマルハナバチが他の花に飛んで同じようなことが起きると、前の花の花粉が次の花の柱頭に付着し、受粉します。

 

 以上が、クマガイソウの受粉が行われるまでのストーリーです。 植物であるクマガイソウが、ほぼ完全に昆虫であるマルハナバチをコントロールしていることがわかります。 高等植物のランのことですから、まだまだ知られていない高度な策略を駆使している可能性があります。

 

 全国各地でクマガイソウの保護地がありますが、クマガイソウだけでなく、マルハナバチも生きられる環境も守らないと、真の保護にはならないことがわかります。 マルハナバチを守るためには、もっと多くのものを守らなければならないでしょう。「自然環境の保護」と一口に言っても、それはなかなか容易なものではないですね。

 

 

クマガイソウの花の構造(背萼片、側花弁、唇弁、蕊柱、仮雄しべ、柱頭)
クマガイソウの花の構造

 

 クマガイソウの花の構造はメインページで解説済ですが、復習も兼ねて改めて上に示しました。

 

 雄しべと雌しべは融合し蕊柱を形成します。 これはラン科植物に共通の特徴です。 蕊柱の先端には、仮雄しべ(かりおしべ)があります。 仮雄蕊(かゆうずい)とも呼ばれ、葯が発達せず、生殖機能を持たない雄しべです。 仮雄しべの下には、雌しべの柱頭(ちゅうとう)がありますが、この写真では見えません。 次の写真でご確認下さい。 蕊柱の基部の左右には雄蕊があり、その先端には葯があります。 アツモリソウ属の花は、概ね似た構造となっています。

 

クマガイソウの花の柱頭(仮雄しべ、雄しべ、葯、蕊柱、柱頭)
クマガイソウの花の柱頭

 

 今回初めて見ることができた、柱頭の様子です。 花を右側面やや下方から見て、画像を90度右に回転しています。

 

 普通の状態では、蕊柱は斜め下向きになり更に「くの字」に曲がっているので、柱頭は花の後方を向き、正面からは見えません。 たとえて言えば、ひざに頭がつくほど深くおじぎをした人の顔が、後方を向くのと同じです。 今回は落ちた花の唇弁を押し下げて、柱頭を見ることができました。

 

 初めて見ることができた柱頭ですが... 白っぽく、のっぺりしていて、なんだかよくわかりませんね。 意外な姿にちょっとがっかりしました。 表面はスポンジのように微細な凸凹があるように見えます。 面積は広く、マルハナバチが背中につけた他の花の花粉を、確実に受け取ってやろうという意図が感じられます。

 

 唇弁内部から脱出しようとするマルハナバチは、まず柱頭に背中を擦りつけることになり、もし他の花の花粉を持っていれば、この花の柱頭に付着して受粉します。 その直後に、次に控える葯に接してこの花の花粉を受け取ります。 マルハナバチは花粉の「運び屋」として使われまくりですね。

 

クマガイソウの柱頭を正面下方から望む
 柱頭を正面下方から望む

 

 柱頭をほぼ花の真下から眺めた写真です。 下を向いた坊主頭の男が、妙なグローブをつけてこちらに襲いかかろうとしている.... ようには見えないか。 頭の下半分、逆三角形の領域が、花粉を受け取る柱頭の部分と思います。

 

 左右の葯は、よく見るとそれぞれ2つに分割されています。 これは葯室(やくしつ)と呼ばれるものです。 じっくり見ると、ちょっとグロいかも。

 

 そろそろ終わりが近づいています。 今回は落ちた花が見つかったお陰で、詳細な画像をお届けすることができました。 クマガイソウが進化の過程で非常に巧妙な花の構造を作り上げ、マルハナバチを送粉者として利用していることが、よくわかりました。

 

 しかし意外なことに、クマガイソウの結実率(受粉した花が果実を実らせる確率)はとても低いのです。 ある調査の論文(*1)によれば、結実率は2.9〜9.7% などの数字が示されています。 クマガイソウは種子繁殖しにくい植物なのです。 これはたとえ条件が良い場所で大群落を形成していても、ほとんどが栄養繁殖で増えた株 --- つまり同一遺伝子の株で構成された群落である可能性が高いことを意味します。

 

 同一の遺伝子だけで構成された群落は、ちょっとした環境の変化で、群落全体が消滅する危険性をはらんでいます。 種子により繁殖した株が多く、遺伝子の多様性に富んだ群落であれば、環境の変化に耐える株が残る可能性があります。

 

 このように非常に頼りない生存能力しかない持たないクマガイソウに、トドメを刺すのが人間です。 自然環境の遷移や人間の開発による自生地環境の消失も少なからずありますが、一番影響が大きいのは植物マニアの園芸採集と業者による大量盗掘です。 夜中に軽トラで乗りつけ、一夜にして群落のすべてが盗掘された例もあるそうです。 それをインターネットで購入する者も同罪です。 こんなことが繰り返されないように法改正などしない限り、この花が見られなくなる日も遠くはないでしょう。

 

 とても長いページになりました。 多くの方が、途中で脱落してしまったのではないかと心配しています。 最後まで読んでくれたアナタは、相当な花好きですネ! どうもありがとうございます。 今後もよろしくお願いいたします。

 

 

< 半透明点に関する補足 2018.04.11 追記>

 

 「半透明点唇弁上部多分布説」などともっともらしい仮説を展開してしまいましたが、この素人が自分の撮影した写真を眺めていただけで思いついたことが、研究者には真面目に取り上げられていたことがわかりました。

 

 書籍「ランの王国」(高橋英樹 編著、北海道大学出版会 発行、2016年8月25日 第1刷)の「第7章 レブンアツモリソウの花生物学」の中のp.79に記載された「ハチを出口に誘導する仕組み」の項目にこう書かれています(該当部のみ抜粋)。

 

『③出口穴近くには色素の抜けた透明な「窓」があり、

 正の走光性を利用してハチを出口方向へと導く』

 

 これは上で述べた「半透明点を唇弁上部に多く配置して明るくし、マルハナバチを出口に誘導する作戦ではないか?」という推論がまさに一致します! ちょっと嬉しい気分です。 やはり私のような初心者であろうと、とにかくじっくり観察して、「なぜこんな形になっているのだろう?」といつも疑問に思うことが大切なのだと、改めて感じたのです。

 

 「ランの王国」は、豊富な写真と最新の研究成果も盛り込まれた、ラン科植物を理解するためにはおススメの入門書です。 北海道大学総合博物館館長の中川光弘氏が書かれたまえがきのタイトル「虫を騙す花に あなたも騙されてみませんか」を見ただけで読みたくなり、そして内容は楽しく勉強になる素晴らしいものでした。

 

 最後に、半透明点がハチを出口に誘導する役割を疑問視する見解も発表されていることも記しておきます(Daumann, 1968)。

 

 

2016.05.03 掲載

2017.11.01 無報酬花であることの記述を追加

2018.04.11 半透明点に関する補足を追記

2021.08.11 誤字を修正

 

参考文献

文献・図鑑などの著作物や、個人・法人のWEBサイトにも著作権があることをご理解の上、ご利用下さい。

(*1)絶滅危惧種クマガイソウの鳥取県における自生状況 永松大 2011

    または 鳥取大学研究成果リポジトリ から本文ファイルをダウンロード

 

 

コメント: 6 (ディスカッションは終了しました。)
  • #1

    山崎陽子 (木曜日, 19 5月 2016 11:38)

    私は、山歩きの話でクマガイソウは鉢植えしか見たことがない、35年前の話をしましたら、そっと教えて頂き、初めて自然の中で咲いていたクマガイソウを見ることができました。感動しました。あのような場所で、大切に保護して下さる方にも感謝でした。来年も、静かに見に行きたいと思います。クマガイソウの事を詳しく説明して頂きありがとうございます。

  • #2

    HiroKen (木曜日, 19 5月 2016 21:35)

    自然の状態のクマガイソウを見ることができて、本当によかったですね!
    やはり花は、自生する野山で見るのが一番美しいです!
    鉢植えの花には魅力を感じないので、我が家にはただの一鉢もないのです。
    これからもたくさん感動の出会いがあるといいですね!

  • #3

    かつどん (水曜日, 24 4月 2019 14:34)

    初めまして。今日、テレビニュースで、埼玉でクマガイソウが見ごろ、という記事をみまして、急に思い出し、近所の群生地を急ぎ見に行ってから、こちらの記事を発見しました。とても詳しく、参考になりました。ありがとうございます。
    上記の場所とは多分違うかとは思いましたが、私の知っている場所も多分自生ではないか、と。ただ、花は10にも満たない感じでした。どなたかが看板をつけて下さったようでしたがそれも倒れていました。
    今後山に入る人たちに愛されて大切にされると良いです。

  • #4

    HiroKen (水曜日, 24 4月 2019 19:30)

    かつどんさん、初めまして。コメントをありがとうございます。
    テレビでクマガイソウのことが流れたのですね。今日のアクセス状況を調べたら、クマガイソウのページが1位になっていました。テレビの影響力は、とても大きいのです。
    ご近所に自生地があるとのこと、10株でも羨ましいことです。ずっとその場所で咲き続けてほしいものですね。もし数が増えたら、嬉しいことです。看板は、つけない方がよいかなと思います。

  • #5

    きひらこうじ (木曜日, 02 5月 2019 17:24)

    私床の、⛰️にもやく1000ほどさいてます。

  • #6

    Ken (木曜日, 02 5月 2019 19:25)

    きひらこうじさん、1000株はスゴイですね。さぞかし壮観なことでしょう!