シナノショウキラン

 

信濃鐘馗蘭 ラン科 ショウキラン属

Yoania flava K.Inoue et T.Yukawa

日本固有種  絶滅危惧lB類(EN)

シナノショウキラン 2013.07.06 長野県木曽郡
シナノショウキラン  2013.07.06 長野県木曽郡

 

 シナノショウキランを見ることができました!

品の良い、薄いクリーム色。 まるで蝋細工の

ような、不思議なたたずまい。 菌従属栄養植物

特有の独特な雰囲気を醸し出していました。

 

 とても数が少なく、なかなか出会えません。

私たちも、今回初めて見ることができました。

まだフレッシュな姿を見ることができて、大

感激でした。

 

シナノショウキラン

 

 高さは10〜30cm。 長野県と岐阜県の山地の

樹林下に、ごく稀に生えます。

 

 妖艶な花です。 なかなかこのような雰囲気を

持つ花に出会えることはありません。

 

 2001年に新種として発表されました(参考1)

それ以前は、キバナノショウキランとされていた

ようです。 このため、少し古めの図鑑には載っ

ていません。

 

 2001年といえば、同じ信州でナベクラザゼン

ソウも新種として発表されています。 同じ年に

2種類も新種が発表されるなんて、スゴイことだ

と思います。 やはり長野県は自然が豊かですね。

 

シナノショウキラン

 

 菌従属栄養植物ですから、葉もなく、葉緑素も持ちません。

菌根を形成し、菌根菌から養分を略奪して生きています。菌類も

特殊なもので、既知のラン菌とは異なるそうです。 その菌の

利用については、特許も取得されています(参考2)

 

シナノショウキラン

 

 10年ほど前に無菌栽培に成功しており(参考3)、人の

手で増やして自然に戻す試みもされようとしているよう

です。「絶滅」の危機を回避でき得る方法が見つかった

ことは喜ばしいですが、彼女たちが人の手を借りずに生

き続けられる環境が維持されることが、真に重要なこと

に変わりはありませんね。

 

シナノショウキラン

 

花は斜め上を向いて咲咲きます。多肉質な感じです。

 

シナノショウキランの花の正面(背萼片、側花弁、側萼片、唇弁、蕊柱、距)
花の正面

 

1個の背萼片、2個の側萼片と側花弁、そして1個の唇弁。

この構造は他のラン科と同じです。 萼片はほぼ平開し

ます。 側花弁は唇弁とともに蕊柱を包み込みます。側

花弁と唇弁の先端部の縁には、紅紫色の小さな斑点があ

り、アクセントになっています。

 

シナノショウキランの花の側面
花の側面

 

 ラン科の植物は、唇弁が特徴的な形状であることが

多いですが、本種も例外ではなく、唇弁が変わった形

をしています。

 

 唇弁は袋状で、後部は大きく前方に湾曲して距状に

突き出します。 この大きく丸っこい距が、突き出し

た顎みたいで、なんとなくユーモラスな顔に見えます。

 

シナノショウキラン

 

 花柄はのっぺりしていて、ねじれの有無が識別しにくいのですが、ねじれは無いように見えました。 シナノショウキランは「ストレート・唇弁下側タイプ」とします。

シナノショウキラン

 

 基部の様子です。 茎の分岐点にある薄茶色の鱗片状のものは、苞です。卵形で、長さ6〜8mm。


 

 長らくキバナノショウキランとされていたシナノシ

ョウキランですが、全体から受ける印象や花の形状は

ショウキランに近いです。

 

 3種を並べて比べてみました。(キバナノショウキ

ランは傷みが進んでしまった状態であることを先にお

断りしておきます)

 

キバナノショウキラン
キバナノショウキラン
シナノショウキラン
シナノショウキラン
ショウキラン
ショウキラン

 

 キバナノショウキランは、根茎から多数の花茎に分かれて

咲きます。 シナノショウキランとショウキランは主となる

茎を伸し、そこからいくつもの花茎を伸ばす点が異なります。

 

 キバナノショウキランの花は上を向きます。 シナノショ

ウキランは斜め上〜横向き、ショウキランは、ほぼ横向きに

咲くように見え、この点でもシナノショウキランはショウキ

ランに近いと思います。

 

 キバナノショウキランの萼片は半開します。 これに対し、

シナノショウキランとショウキランは、萼片をほぼ平開まで

開きます。

 

キバナノショウキラン
キバナノショウキラン
シナノショウキラン
シナノショウキラン
ショウキラン
ショウキラン

 

 キバナノショウキランの花はほぼ白色です。 上の写真

では見えませんが萼片の外側が黄褐色をしているので黄花

の名がついたのでしょう。 シナノショウキランは薄いク

リーム色、ショウキランは薄いピンク色です。

 

 シナノショウキランとショウキランの唇弁と萼片の先端

部には、紅紫色の斑点がありますが、キバナノショウキラ

ンにはありません。

 

 キバナノショウキランは唇弁の前部凹部に黄色の毛が密

生すると図鑑にありましたが、花が古かったせいか、それ

は観察できませんでした。 シナノショウキランとショウ

キランの唇弁は無毛です。

 

 以上のように、シナノショウキランはキバナノショウキ

ランよりショウキランに類似点が多いことがわかりました。

しかし、シナノショウキランとショウキランも、細かく見

ると色以外にも違いがあります。 最後にその相違点を下

の写真に示します。

 

 ショウキラン

 シナノショウキラン

 

唇弁の縁の形状に相違があります。 ショウキランは

細裂していますが、シナノショウキランは滑らかです。

上の2枚の写真は、PCならマウスオーバーすると特徴

が図示されます。 スマホはタップして下さい。

 

 

外部参考サイト

参考1:2001年10月24日 信濃毎日新聞の記事

    「シナノショウキランなど 県内で相次ぎ新種確認」

    →記事は削除されました。

参考2:J-tokkyoのページ

    「ラン共生菌及びシナノショウキランの人工発芽方法・人工増殖方法」

参考3:シナノショウキランの人工増殖と新種共生菌について

     →このサイトは削除されました。

 

自生地の情報をいただいた、花友のOさんに感謝致します。

 

2013.08.18 掲載

 

 

*お名前にホームページやブログのリンクを設定いただいたが、そのリンク先が消失しているコメント、及び、誤ってリンク先にメールアドレスが設定されたコメントは、リンク切れ撲滅の観点から削除させていただきました。

 

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