ウスキムヨウラン

(ウスギムヨウラン)

 

薄黄無葉蘭 ラン科 ムヨウラン属

Lecanorchis kiusiana Tuyama

準絶滅危惧 (Near Threatened)

#1 ウスキムヨウラン  2017.06.07 愛知県 alt=260m
#1 ウスキムヨウラン  2017.06.07 愛知県 alt=260m

 

 暖温帯の常緑広葉樹林の林床に生える、菌従属栄養植物のランです。 葉緑素を持たず、光合成の能力はありません。 地下茎の菌根にチチタケ属やベニタケ属の菌を住まわせ、養分を奪取して生きる、菌寄生植物です(*2)

 

 和名の由来は、薄黄色の花色に因みます。 記載者は「淡クリーム黄色」と表現しています。

 

 一部の図鑑(例:*3)や、多くのインターネット上の情報では「ウスムヨウラン」と濁って記載されています。 確かに、ウスキよりウスギの方が言いやすい気もします。 しかし、本種を初めて記載した1995年の津山尚氏の論文(*1)では、『・・新種と認めてウスムヨウラン(淡黄無葉蘭) Lecanorchis.kiusiana の名を与えた。』と濁らない記載となっています。 本サイトでは命名者の記載を尊重し、ウスムヨウランとします。

 

#2 ウスキムヨウラン  高さは7〜30cmほど
#2 ウスキムヨウラン  高さは7〜30cmほど

 

 開花時の草丈は、7〜30cm。 エンシュウムヨウランと同様、ムヨウラン属の中では小柄な部類です。  直立した茎の先に2〜8個の花をまばらにつけます(*2, *3)

 

 この自生地は、常緑広葉樹林の林床で、薄暗い環境でした。 観察日は天候に恵まれず、空は厚い雲に覆われ、時折小雨がぱらつくような状態で、かなり暗かった。 このためカメラのISO感度をかなり上げねばならず、その結果、現像作業でノイズリダクションをたっぷり使うことになりました。

 

#3 ウスキムヨウラン
#3 ウスキムヨウラン

 

 花期は5〜7月。 分布域は、本州(関東地方以南)、四国、九州、琉球諸島(奄美大島以北)です(*2)

 

#4 ウスキムヨウランの花は、始め上向きに咲く
#4 花は、始め上向きに咲く

 

 花柄子房が花序からあまり離れません。 開花直前の蕾や、開花直後と思われる花を観察すると、始めはやや上向きに咲くようです。 その後開花が進むにつれ、横方向を向き、花が終わると下向きにうなだれるようでした。

 

 花は、あまり開きません。 ほとんどの花が、ほぼ閉じて筒状になっているか、半開以下でした。 天候や温度、湿度、日照などの条件がそろうと、もっと大きく開花するのかも知れません。 そんな状態の中でも、少しでも大きく開いた花を探し、観察しました。

 

#5 ウスキムヨウランの花
#5 ウスキムヨウランの花

 

 花を見てまず視線が吸い寄せられるのは、唇弁です。 唇弁は蕊柱の下半部と合着し(写真では見えません)先は3裂します。 側裂片は小さく、中裂片は波状歯があり、緑に乳頭状突起がまばらにはえます。  中裂片の中ほどから先にかけては、毛状突起が密生します。  毛状突起の先端は紅紫色になっており、本種の特徴でもあります。

 

#6 唇弁の平面図
#6 唇弁の平面図
#7 ウスキムヨウラン 花の側面
#7 ウスキムヨウラン 花の側面

 

 #6は、唇弁の平面図です。 論文*1のFig.2 E の図柄部分を引用させていただき、各部の名称を追記したものです。 これを見てから、#7花の側面を見ると、わかりやすいと思います。

 

 唇弁は、長さ10〜12mm。 中裂片は、側萼片との境界部で下側に反り返ります。 毛状突起が密生しています。 尚、この写真では、側裂片の上辺は、側花弁に隠れて見えません。

 

#8 ウスキムヨウランの花の正面  各部の名称
#8 ウスキムヨウランの花の正面  各部の名称

 

 唇弁は白色です。 中裂片の縁は不規則な波状歯があり、まばらに乳頭状突起が生えることは前述しましたが、その一部の先端部が、淡紫色になっていました。 上の写真では、特に唇弁の向かって右側の縁に注目して下さい。 但し、淡紫色になっている部分は少なく、接近して観察しないと目立たないものでした。 図鑑やネット上でこのことに触れている記述は、見つかりませんでした。

 

 中央部では、淡黄色を帯びた毛状突起が密生します。 こちらの先端部は、縁の乳頭状突起よりも赤味を帯びた、紅紫色でした。 毛状突起の先端が紅紫色になることは、本種の大きな特徴です。

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#9 毛状突起の分岐はないように見えるが...
#9 毛状突起の分岐はないように見えるが...

 

 #9は毛状突起の分岐(枝分かれ)の様子を探るために撮影したものですが、明確にわかるような写真は撮れませんでした。 ただ、エンシュウムヨウランの毛状突起は一見しただけで分岐していることがわかるのに対して、本種はほとんど分岐がないように見えました。 本当に分岐がないかは、顕微鏡レベルの観察が必要となりそうです。

 

#10 副萼とその下の膨らみ
#10 副萼とその下の膨らみ

 

 ムヨウラン属は、花柄子房の最上端の花被との接合部に、副萼と呼ばれる小さな部位があります。 萼片(背萼片と側萼片)の外側の更に小さな萼状のものです。 本種はこの副萼のすぐ下に、膨らみがあることが特徴です。

 

 但し、膨らみが目立たない個体もあったので、この形質のみを重視して識別することは危険です。

 

 副萼の下の膨らみの有無は、種により異なります。 副萼の下が膨らむ種としては、他にエンシュウムヨウランなどがあります。 逆に膨らみがない種としては、ムヨウランホクリクムヨウラン、キイムヨウランなどがあります。

 

#11 萼片が緑色がかったウスキムヨウラン
#11 萼片が緑色がかった個体

 

 花色は、変異があるようです。 #11は、萼片が緑色を帯びた個体です。 非常に黄色味が強いものは、キバナウスキムヨウランという品種として、区別されているそうです。

 

#12 唇弁の毛状突起先端の紫色が薄いウスキムヨウラン
#12 唇弁の毛状突起先端の紫色が薄い個体

 

唇弁の毛状突起先端の紅紫色が、非常に薄い個体もありました(#12)。

 

#13 昆虫が訪花していました
#13 昆虫が訪花していました
#14 ポリネーターでしょうか? 違うかな
#14 ポリネーターでしょうか? 違うかな

 

 名前のわからない昆虫が訪花していました。 何の目的で訪れたのか、また本種のポリネーターであるか、などはわかりませんでした。

 

 

 この植物は、愛知県の花友のSさんに情報をご提供いただき、初めて見ることができました。 急遽、愛知県訪問を決めた私たちのために、前日の深夜までかかって、自生地情報の資料を作成下さったのです。 この場を借り、改めて御礼申し上げます。 ありがとうございました。

 

< 引用・参考文献・外部サイト >

 

*1 津山 尚 ムヨウラン属の一新種

   http://www.jjbotany.com/getpdf.php?tid=3882

   植物研究雑誌 The Journal of Japanese Botany 第30巻 第6号 p.181-187

   http://www.jjbotany.com/

 

*2 日本のラン ハンドブック ①低地・低山編

   http://www.bun-ichi.co.jp//tabid/57/pdid/978-4-8299-8117-7/catid/1/Default.aspx

   文一総合出版 2015年5月1日 初版第1刷 p.8

   http://www.bun-ichi.co.jp/

 

*3 日本の野生植物 草本 1 単子葉類

   平凡社 1982年1月20日 初版第1刷 p.206 

 

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2017.10.17 掲載

 

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 Dairy-Hiroダス

  2017年6月7日 ぐるっと日帰り愛知

 

 

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